【書籍化決定】身体だけの関係だったはずの騎士団長に、こっそり産んだ双子ごと愛されています
身体だけ
仕事を終えて帰宅したライザは、まっすぐに浴室へと向かった。予定より早く帰れたものの、今夜はイグナートが来る。だから先にシャワーを浴びてしまおうと思ったのだ。今日は汗もかいたし、彼に抱かれる前に身体を綺麗にしておくのは一応の礼儀だと思うから。
なんとなく頭の中でそんな言い訳じみたことを考えつつ、ライザは纏めている髪を下ろす。ピンクブラウンの髪が、ふわふわと揺れて背中のあたりまで広がった。
熱いお湯を浴びながら、手早く髪と身体を洗う。いつもの石鹸ではなくいい香りのするとっておきの石鹸を使ったことに、深い意味はない。今日は疲れたから、自分へのご褒美にお気に入りのアイテムを選んだだけだ。
髪や肌から甘いベリーの香りがすることに気分よくなりながら、ライザは身体にタオルを巻きつけると浴室を出た。
その瞬間、目に入ったのは上半身裸のイグナートの姿。鍛え上げられた筋肉にうっとり見惚れかけて、ライザは慌てて首を振る。
「ど、どうして」
思った以上に早い彼の到着に、なんだか妙に焦ってしまう。シャワーを浴びていてライザがノックの音に気づかなかったから、合鍵を使って入ってきたのだろう。
制服のベルトを外そうとしていたイグナートは、大袈裟な仕草で肩をすくめてみせた。
「おっと、遅かったか。一緒に入ろうかと思ったんだが」
「は、入るわけないでしょう……っ!」
身体に巻いたタオルをしっかりと押さえて、ライザは叫ぶ。一度だけ明るい浴室で抱かれたことがあったが、声は響くしあれこれ見えて恥ずかしいしで散々だったのだ。
同じことを思い出しているのか、イグナートはクッと低く笑うとライザの耳元に顔を寄せた。
「残念。あの時のライザ、すごく可愛かったのに」
「……っ」
顔が熱くなるのを感じて、ライザは唇を引き結んだ。いつもは厳しい顔をしていて皆に恐れられる騎士団長なのに、ここへ来た時の彼は明るい笑顔を浮かべることが多い。
仕事中はライザにも丁寧な物腰で接してくるが、二人きりの時はお互い砕けた口調で話している。
お互いの身分を忘れさせるようなその口調は心地いい反面、イグナートにとってライザは貴族令嬢ではなく単なるセフレなのだろうなとも思う。
「ご、ご飯食べる? 何か作りましょうか」
話題を変えようと声をあげると、イグナートがライザの肩に触れた。むきだしの肌に彼の手のぬくもりを直に感じて、また鼓動が速くなる。
「ライザの好きな店でテイクアウトしてきた。でも、食事より先にライザが食べたい」
「イグナー……んっ」
指先で軽く顎を持ち上げられて、唇が重なった。何度も啄むようにしながら、イグナートがライザの髪を指先に絡め、そっと耳にかける。指の腹で耳たぶを撫でられて、肩がぴくりと跳ねた。
やがて侵入してきた舌が、ライザから言葉を奪う。息継ぎさえまともにできないほどの深いキスに、身体から力が抜けていく。ようやく唇が離れた時、ライザは体重をほとんどイグナートに預けていた。
「キスだけでぐったりしちゃうライザ、本当に可愛い」
額にキスを落として、イグナートはライザの身体を抱え上げた。そのまま彼は迷いのない足取りで寝室へと向かう。
なんとなく頭の中でそんな言い訳じみたことを考えつつ、ライザは纏めている髪を下ろす。ピンクブラウンの髪が、ふわふわと揺れて背中のあたりまで広がった。
熱いお湯を浴びながら、手早く髪と身体を洗う。いつもの石鹸ではなくいい香りのするとっておきの石鹸を使ったことに、深い意味はない。今日は疲れたから、自分へのご褒美にお気に入りのアイテムを選んだだけだ。
髪や肌から甘いベリーの香りがすることに気分よくなりながら、ライザは身体にタオルを巻きつけると浴室を出た。
その瞬間、目に入ったのは上半身裸のイグナートの姿。鍛え上げられた筋肉にうっとり見惚れかけて、ライザは慌てて首を振る。
「ど、どうして」
思った以上に早い彼の到着に、なんだか妙に焦ってしまう。シャワーを浴びていてライザがノックの音に気づかなかったから、合鍵を使って入ってきたのだろう。
制服のベルトを外そうとしていたイグナートは、大袈裟な仕草で肩をすくめてみせた。
「おっと、遅かったか。一緒に入ろうかと思ったんだが」
「は、入るわけないでしょう……っ!」
身体に巻いたタオルをしっかりと押さえて、ライザは叫ぶ。一度だけ明るい浴室で抱かれたことがあったが、声は響くしあれこれ見えて恥ずかしいしで散々だったのだ。
同じことを思い出しているのか、イグナートはクッと低く笑うとライザの耳元に顔を寄せた。
「残念。あの時のライザ、すごく可愛かったのに」
「……っ」
顔が熱くなるのを感じて、ライザは唇を引き結んだ。いつもは厳しい顔をしていて皆に恐れられる騎士団長なのに、ここへ来た時の彼は明るい笑顔を浮かべることが多い。
仕事中はライザにも丁寧な物腰で接してくるが、二人きりの時はお互い砕けた口調で話している。
お互いの身分を忘れさせるようなその口調は心地いい反面、イグナートにとってライザは貴族令嬢ではなく単なるセフレなのだろうなとも思う。
「ご、ご飯食べる? 何か作りましょうか」
話題を変えようと声をあげると、イグナートがライザの肩に触れた。むきだしの肌に彼の手のぬくもりを直に感じて、また鼓動が速くなる。
「ライザの好きな店でテイクアウトしてきた。でも、食事より先にライザが食べたい」
「イグナー……んっ」
指先で軽く顎を持ち上げられて、唇が重なった。何度も啄むようにしながら、イグナートがライザの髪を指先に絡め、そっと耳にかける。指の腹で耳たぶを撫でられて、肩がぴくりと跳ねた。
やがて侵入してきた舌が、ライザから言葉を奪う。息継ぎさえまともにできないほどの深いキスに、身体から力が抜けていく。ようやく唇が離れた時、ライザは体重をほとんどイグナートに預けていた。
「キスだけでぐったりしちゃうライザ、本当に可愛い」
額にキスを落として、イグナートはライザの身体を抱え上げた。そのまま彼は迷いのない足取りで寝室へと向かう。