【書籍化決定】身体だけの関係だったはずの騎士団長に、こっそり産んだ双子ごと愛されています

リガロフ伯爵家へ

 優しく肩を揺すられて、ライザはぼんやりと目を開ける。馬車のあまりの乗り心地のよさに、ぐっすりと眠っていたようだ。隣ではイグナートの膝の上でアーラがご機嫌に歌を歌っているし、パーヴェルは窓の外の景色に夢中だ。

「そろそろ着く」

「ごめんなさい、すっかり眠ってしまっていたわ」

 欠伸を噛み殺しつつ、ライザは窓の外を見た。懐かしい景色が目に入り、王都に帰ってきたことを実感する。

 辻馬車を乗り継げば一日がかりの移動だが、乗り換えが必要なければ随分早く着くらしい。前回と同じような時間に出発したのに、太陽はまだ高い位置にある。

 途中で一度昼食のために休憩を挟んだ以外はほとんど記憶にないので、ずっと眠っていたようだ。昨晩は緊張して、ほとんど寝られなかったせいもあるのだろう。

 やがて馬車は、立派な屋敷の前に停まった。広い庭には綺麗な花がたくさん咲いていて、花が好きなアーラがはしゃいだ声をあげる。執事らしき男性が出迎えのために近づいてくるのを見て、ライザは心を落ち着かせるために胸に手を当てて、大きく深呼吸をした。

「アーラ、パーヴェル。これから、あなたたちのおじいさまとおばあさまに会うの。ちゃんとごあいさつできる?」

「できるよ!」

 双子が声を揃えて即答し、ライザは笑ってうなずいた。二人ともあまり激しい人見知りをする方ではないが、第一印象は大切だ。緊張していることが分かったのか、イグナートが安心させるようにライザの肩を抱いた。

「そんなに硬くならなくても平気だ。うちの者は皆、ライザたちに会うのを楽しみにしている」

「うん……。分かっていても緊張してしまうのよ」

「大丈夫だって。さぁ、行こう」

 先に馬車を降りたイグナートが、アーラを降ろし、次いでライザに手を差し出す。ライザはその手を取ると、パーヴェルと一緒に馬車を降りた。
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