【書籍化決定】身体だけの関係だったはずの騎士団長に、こっそり産んだ双子ごと愛されています
指輪
アントノーヴァ伯爵家への訪問は、次の休みを予定している。詳しい用件は伝えず、イグナートの名前で会いたいという旨だけしたためた手紙を出しており、快諾の返事をもらった。
久しぶりに両親と顔を合わせることになるのだが、ライザは楽しみにするどころかむしろ憂鬱な気分だ。アナスタシアから聞いたコヴァレー男爵との件も気になるし、子供たちのことをどう言われるか不安なのだ。
アナスタシアの話はイグナートにも伝えておいたので、彼も密かに色々と情報収集をしてくれているらしい。
もう何年も顔を合わせていないのだし、このまま放っておいてほしいというのが正直なところだ。それでも、この先王都で暮らす以上、そういうわけにもいかない。
約束の日が近づくにつれて顔色を悪くするライザを見かねたのか、イグナートが買い物へと連れ出してくれた。たまには二人で過ごしたいとのことで、子供たちはお留守番だ。
「今日は、指輪を買いに行こうと思うんだ」
馬車に乗り込むと、イグナートはすぐにライザの隣に座って腰を抱き寄せた。
「指輪?」
「前に言っただろう、ライザが俺のものだというしるしを贈りたいって」
そう言ってイグナートがライザの左手をそっと撫でる。そのまま指を絡めるように手を握られて、ライザは速くなった鼓動を誤魔化すようにうなずいた。
「ある程度の目星はつけてあるが、ライザの気に入るものがいいなと思って。だから、一緒に選ぼう」
「ありがとう、嬉しいわ」
「本当は指輪だけでなく、ありとあらゆる装身具を贈りたいくらいだけどな。ライザが身につけるものの全ては、俺が贈ったものでありたい」
独占欲をほのめかされて、ライザの頬に熱が集まる。それに気づいたのか、イグナートが笑ってライザの頬に口づけた。
「……っ、急に何」
「真っ赤になって可愛い。子供たちと過ごす時間はもちろん楽しいが、ライザと二人きりで出かけるのなんて久しぶりだから浮かれてるんだ」
いつの間にか抱きしめられるように両腕で囲われていて、密着が深まる。速くなった鼓動は、きっとイグナートにも伝わっているに違いない。
お互いの視線が絡まり、引き寄せられるようにゆっくりと唇が重なった。何度も啄むようなキスをしながら、イグナートがそっとライザの髪を耳にかける。
「車輪の音でかき消されるとは思うけど、声は堪えて、ライザ」
「ん、待っ……ふ、ぁ」
止める間もなくまたキスが降ってきて、滑り込んできた舌がライザの言葉を奪っていく。必死に声をあげまいと耐えるものの、イグナートのキスは巧みで、鼻にかかった声が漏れてしまう。
息継ぎのために唇が一瞬離れただけで、ライザの口から吐息交じりの声がこぼれ落ちた。再び深いキスをしてライザの声を封じたあと、イグナートはにやりと笑って顔をのぞき込んできた。
「我慢してるのを見ると、声をあげさせたくなるな」
「堪えてって言った、のに……っ」
「うん。ライザのその声を聞いていいのは、俺だけだからな。でも、声を聞きたい気持ちもある」
「意味、分からな……んっ」
「だから、俺だけに聞こえる声で喘いで」
そんな無茶なことを言って、イグナートはライザを抱き寄せた。与えられる深い口づけにも、ゆっくりとなぞるように腰を撫でる手にも官能を呼び起こされながら、ライザは懸命に声を堪えつつ甘い触れあいに溺れた。
久しぶりに両親と顔を合わせることになるのだが、ライザは楽しみにするどころかむしろ憂鬱な気分だ。アナスタシアから聞いたコヴァレー男爵との件も気になるし、子供たちのことをどう言われるか不安なのだ。
アナスタシアの話はイグナートにも伝えておいたので、彼も密かに色々と情報収集をしてくれているらしい。
もう何年も顔を合わせていないのだし、このまま放っておいてほしいというのが正直なところだ。それでも、この先王都で暮らす以上、そういうわけにもいかない。
約束の日が近づくにつれて顔色を悪くするライザを見かねたのか、イグナートが買い物へと連れ出してくれた。たまには二人で過ごしたいとのことで、子供たちはお留守番だ。
「今日は、指輪を買いに行こうと思うんだ」
馬車に乗り込むと、イグナートはすぐにライザの隣に座って腰を抱き寄せた。
「指輪?」
「前に言っただろう、ライザが俺のものだというしるしを贈りたいって」
そう言ってイグナートがライザの左手をそっと撫でる。そのまま指を絡めるように手を握られて、ライザは速くなった鼓動を誤魔化すようにうなずいた。
「ある程度の目星はつけてあるが、ライザの気に入るものがいいなと思って。だから、一緒に選ぼう」
「ありがとう、嬉しいわ」
「本当は指輪だけでなく、ありとあらゆる装身具を贈りたいくらいだけどな。ライザが身につけるものの全ては、俺が贈ったものでありたい」
独占欲をほのめかされて、ライザの頬に熱が集まる。それに気づいたのか、イグナートが笑ってライザの頬に口づけた。
「……っ、急に何」
「真っ赤になって可愛い。子供たちと過ごす時間はもちろん楽しいが、ライザと二人きりで出かけるのなんて久しぶりだから浮かれてるんだ」
いつの間にか抱きしめられるように両腕で囲われていて、密着が深まる。速くなった鼓動は、きっとイグナートにも伝わっているに違いない。
お互いの視線が絡まり、引き寄せられるようにゆっくりと唇が重なった。何度も啄むようなキスをしながら、イグナートがそっとライザの髪を耳にかける。
「車輪の音でかき消されるとは思うけど、声は堪えて、ライザ」
「ん、待っ……ふ、ぁ」
止める間もなくまたキスが降ってきて、滑り込んできた舌がライザの言葉を奪っていく。必死に声をあげまいと耐えるものの、イグナートのキスは巧みで、鼻にかかった声が漏れてしまう。
息継ぎのために唇が一瞬離れただけで、ライザの口から吐息交じりの声がこぼれ落ちた。再び深いキスをしてライザの声を封じたあと、イグナートはにやりと笑って顔をのぞき込んできた。
「我慢してるのを見ると、声をあげさせたくなるな」
「堪えてって言った、のに……っ」
「うん。ライザのその声を聞いていいのは、俺だけだからな。でも、声を聞きたい気持ちもある」
「意味、分からな……んっ」
「だから、俺だけに聞こえる声で喘いで」
そんな無茶なことを言って、イグナートはライザを抱き寄せた。与えられる深い口づけにも、ゆっくりとなぞるように腰を撫でる手にも官能を呼び起こされながら、ライザは懸命に声を堪えつつ甘い触れあいに溺れた。