【書籍化決定】身体だけの関係だったはずの騎士団長に、こっそり産んだ双子ごと愛されています
ライザの家族
ライザがイグナートと再会してから半年あまりたった頃、二人はささやかな結婚式を挙げた。
今日は、身内や親しい人だけを招待して、披露宴を兼ねたガーデンパーティーをする予定だ。
準備はおおむね順調に進んだが、ウェディングドレスのデザインを巡ってヴェーラとリガロフ伯爵夫人が争ったり、メーレフ公爵が自分も双子たちに「おじーちゃま」と呼ばれたいと言ってリガロフ伯爵が拗ねたりと、些細な揉め事は色々とあった。もちろん、どれも幸せな揉め事なのだが。
結局、ライザのドレスは義母であるリガロフ伯爵夫人に選んでもらい、ヴェーラには双子たちの衣装を選んでもらうことで双方に納得してもらい、メーレフ公爵は「大じぃちゃま」と呼ばれることで決着した。
そんなライザのウェディングドレスは、細身のシンプルなシルエットのもの。繊細な花の刺繍がふんだんに施されたチュールレースを重ねたスカートは、動くたびにふわりと揺れて、白い花びらが舞っているように見える。
アーラのドレスにも同じ刺繍のチュールレースを使い、こちらはふわふわと大きく広がるデザインだ。いかにもお姫様っぽいシルエットに、アーラは大喜びだ。サイドを結った金の髪にはイグナートがお土産に買ってきた「きらきらのリボン」を着けていて、よく似たものがライザの髪にも飾られている。
イグナートとパーヴェルは同じデザインの淡いグレーのフロックコートで、二人共胸元にお揃いのラペルピンを飾っている。それはもちろん、イグナートがパーヴェルのお土産に買ってきたものだ。いつの間にか彼は、自分用にも同じものを購入していたらしい。
親子二人が並べばその姿はそっくりで、ライザは可愛さとかっこよさと愛おしさで叫び出しそうになっていた。
「最高に綺麗だな、ライザ」
「ふふ、ありがとう。イグナートも素敵よ」
「おとーしゃん、アーラは? アーラかわいい?」
「パーヴェルかっこいい?」
見つめあう二人の間に、子供たちが割って入ってくる。ライザはイグナートと顔を見合わせて笑い、可愛い我が子の頭を撫でた。
「もちろんアーラも可愛い。世界一可愛いお姫様だな」
「パーヴェルもかっこいいわ。凛々しくって、立派な騎士みたいよ」
「おひめさまー! ドレスふわふわでしょ!」
「パーヴェル、きしみたい? かっこいいでしょ?」
アーラはその場でくるくると回って、スカートがふんわり広がるのを見て嬉しそうにしている。パーヴェルは、キリッとした表情で剣を構える仕草をしてみせると、そのまま見えない何かと戦い始めた。
そんな双子を見つめて笑いながら、ライザはイグナートを見上げた。
「あらためて、イグナートと家族になれて本当に嬉しい。あの時、あなたの子じゃないなんて言ったのに、私を探してくれてありがとう。そして、私と子供たちを受け入れてくれて、ありがとう」
「礼を言うのは、こちらのほうだ。ろくに気持ちを言葉にせず、辛い思いばかりさせていたのに、俺たちの子を産んで大切に育ててくれて……。ライザに会えて子供たちと暮らせて、俺は今、本当に幸せだ」
「私も勝手に勘違いしていたんだもの。そもそも酔って記憶をなくしたのが一番悪いけど」
イグナートのことを好きなのだとちゃんと伝えていれば、拗れることはなかったはずだ。だけど、それがあったからこそ、こうして家族四人で幸せになれた。
ライザはまっすぐにイグナートに向きあうと、彼の手をぎゅっと握りしめた。
「ありがとう、イグナート。大好き。心からあなたのことを愛してるわ。これからもずっと一緒にいてね」
「ふ、不意打ちすぎるだろ」
ぶわっと赤くなった頬を隠すように横を向いて、イグナートは小さく咳払いをした。そしてライザの手をぐいっと引き寄せた。
「そんなこと言われたら、今すぐ部屋に攫って閉じ込めてしまいたくなる。夜まで我慢だって必死に言い聞かせてるのに」
腕の中にしっかりとライザを囲って、イグナートがため息交じりに言う。その言葉に、ライザの胸も高鳴った。
あまり深く考えないようにしていたが、今夜がいわゆる初夜ということになるのだろうか。
離れていた三年分を埋めるくらい、キスは何度も交わしたが、二人はまだ夜を共にしていない。
ライザの鼓動が速くなったことに気づいたのか、耳元でイグナートが小さく笑った。そして、軽く耳たぶに口づけられる。
「愛してる、ライザ。ようやく名実ともにライザを手に入れられて、俺は今、世界一幸せな男だ。今夜は三年と半年分、じっくりとライザを愛したい」
「え、半年分増えてない……?」
「そりゃ、もちろん。きっと朝まで寝かせてやれないから、今から覚悟していて」
「待って、今夜だけで……ってことじゃないわよね?」
「さぁ、どうかな」
くすくすと笑って、イグナートはライザを抱きしめる腕に力を込めた。それに気づいたのか、アーラとパーヴェルも駆け寄ってきて抱きついてくる。
「アーラも、ぎゅーして!」
「パーヴェルも!」
もちろんと笑ったイグナートが両腕に双子を抱きかかえると、再びライザを抱き寄せた。家族四人で抱きあうこの体勢が何よりも幸せだと思いながら、ライザも笑顔で愛しい子供たちに頬ずりをした。
今日は、身内や親しい人だけを招待して、披露宴を兼ねたガーデンパーティーをする予定だ。
準備はおおむね順調に進んだが、ウェディングドレスのデザインを巡ってヴェーラとリガロフ伯爵夫人が争ったり、メーレフ公爵が自分も双子たちに「おじーちゃま」と呼ばれたいと言ってリガロフ伯爵が拗ねたりと、些細な揉め事は色々とあった。もちろん、どれも幸せな揉め事なのだが。
結局、ライザのドレスは義母であるリガロフ伯爵夫人に選んでもらい、ヴェーラには双子たちの衣装を選んでもらうことで双方に納得してもらい、メーレフ公爵は「大じぃちゃま」と呼ばれることで決着した。
そんなライザのウェディングドレスは、細身のシンプルなシルエットのもの。繊細な花の刺繍がふんだんに施されたチュールレースを重ねたスカートは、動くたびにふわりと揺れて、白い花びらが舞っているように見える。
アーラのドレスにも同じ刺繍のチュールレースを使い、こちらはふわふわと大きく広がるデザインだ。いかにもお姫様っぽいシルエットに、アーラは大喜びだ。サイドを結った金の髪にはイグナートがお土産に買ってきた「きらきらのリボン」を着けていて、よく似たものがライザの髪にも飾られている。
イグナートとパーヴェルは同じデザインの淡いグレーのフロックコートで、二人共胸元にお揃いのラペルピンを飾っている。それはもちろん、イグナートがパーヴェルのお土産に買ってきたものだ。いつの間にか彼は、自分用にも同じものを購入していたらしい。
親子二人が並べばその姿はそっくりで、ライザは可愛さとかっこよさと愛おしさで叫び出しそうになっていた。
「最高に綺麗だな、ライザ」
「ふふ、ありがとう。イグナートも素敵よ」
「おとーしゃん、アーラは? アーラかわいい?」
「パーヴェルかっこいい?」
見つめあう二人の間に、子供たちが割って入ってくる。ライザはイグナートと顔を見合わせて笑い、可愛い我が子の頭を撫でた。
「もちろんアーラも可愛い。世界一可愛いお姫様だな」
「パーヴェルもかっこいいわ。凛々しくって、立派な騎士みたいよ」
「おひめさまー! ドレスふわふわでしょ!」
「パーヴェル、きしみたい? かっこいいでしょ?」
アーラはその場でくるくると回って、スカートがふんわり広がるのを見て嬉しそうにしている。パーヴェルは、キリッとした表情で剣を構える仕草をしてみせると、そのまま見えない何かと戦い始めた。
そんな双子を見つめて笑いながら、ライザはイグナートを見上げた。
「あらためて、イグナートと家族になれて本当に嬉しい。あの時、あなたの子じゃないなんて言ったのに、私を探してくれてありがとう。そして、私と子供たちを受け入れてくれて、ありがとう」
「礼を言うのは、こちらのほうだ。ろくに気持ちを言葉にせず、辛い思いばかりさせていたのに、俺たちの子を産んで大切に育ててくれて……。ライザに会えて子供たちと暮らせて、俺は今、本当に幸せだ」
「私も勝手に勘違いしていたんだもの。そもそも酔って記憶をなくしたのが一番悪いけど」
イグナートのことを好きなのだとちゃんと伝えていれば、拗れることはなかったはずだ。だけど、それがあったからこそ、こうして家族四人で幸せになれた。
ライザはまっすぐにイグナートに向きあうと、彼の手をぎゅっと握りしめた。
「ありがとう、イグナート。大好き。心からあなたのことを愛してるわ。これからもずっと一緒にいてね」
「ふ、不意打ちすぎるだろ」
ぶわっと赤くなった頬を隠すように横を向いて、イグナートは小さく咳払いをした。そしてライザの手をぐいっと引き寄せた。
「そんなこと言われたら、今すぐ部屋に攫って閉じ込めてしまいたくなる。夜まで我慢だって必死に言い聞かせてるのに」
腕の中にしっかりとライザを囲って、イグナートがため息交じりに言う。その言葉に、ライザの胸も高鳴った。
あまり深く考えないようにしていたが、今夜がいわゆる初夜ということになるのだろうか。
離れていた三年分を埋めるくらい、キスは何度も交わしたが、二人はまだ夜を共にしていない。
ライザの鼓動が速くなったことに気づいたのか、耳元でイグナートが小さく笑った。そして、軽く耳たぶに口づけられる。
「愛してる、ライザ。ようやく名実ともにライザを手に入れられて、俺は今、世界一幸せな男だ。今夜は三年と半年分、じっくりとライザを愛したい」
「え、半年分増えてない……?」
「そりゃ、もちろん。きっと朝まで寝かせてやれないから、今から覚悟していて」
「待って、今夜だけで……ってことじゃないわよね?」
「さぁ、どうかな」
くすくすと笑って、イグナートはライザを抱きしめる腕に力を込めた。それに気づいたのか、アーラとパーヴェルも駆け寄ってきて抱きついてくる。
「アーラも、ぎゅーして!」
「パーヴェルも!」
もちろんと笑ったイグナートが両腕に双子を抱きかかえると、再びライザを抱き寄せた。家族四人で抱きあうこの体勢が何よりも幸せだと思いながら、ライザも笑顔で愛しい子供たちに頬ずりをした。