恋はいらないのに俺様CEOが迫ってきます
ゲリラプレゼンとCEOのお気に入り
黒見に交際を求められたのは一昨日のことだ。

入社して日も浅くまだなにも成果を上げていないのに、イケメンCEOに見初められるとはあまりにも現実味がない話でいまだに受け止めきれない。

(どうして私を? いい女だと言ってたけど私は普通だよ。なにか勘違いしてるのかな。それとも黒見CEOの中のいい女の定義が世間一般とずれてるとか?)

部署の出入口近くの席で自社と他社の保険商品の比較データを作成しつつも、時々黒見の顔が浮かんできて困っていた。

(あれからなにもアクションがないから冗談だったのかも。でもまだ二日経ったところだから安心できない)

『狙った獲物は逃がさない。覚悟しておけ』

低く伸びやかでスパイスの効いた黒見の声が脳内でリピートする。

落ち着かない気分なのはそのせいだけでなく、宇津木にヒヤヒヤしているせいでもある。

黒見の呼び出し以降、目に見えて梨乃への当たりが強くなった。

どうしたものかと思っていると、ノートパソコンの画面にメールの通知が現れた。

それは宇津木からで恐る恐る開いて読むと、会議用の追加資料の作成指示だった。

(ちょっと待ってよ。その会議、十一時からなんだけど)

今はその三十分前だ。間に合わない可能性の方が高く、無理だと返信しようとすると宇津木がこちらに歩いてきた。

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