恋はいらないのに俺様CEOが迫ってきます
伝説の男とホットドッグ
黒見との食事から八日が過ぎ、今日はお正月。梨乃は実家に帰省している。
実家は埼玉にあり、築二十年ほどで二階建てのありふれた木造住宅だ。
リビングで座卓を囲んでいるのは梨乃と両親と弟で、兄は早朝から恋人と初詣デートに出かけて神社が相当混んでいるのか昼になっても帰ってこない。
「お母さんの昆布巻き、おいしい」
テレビの正月特番を見ながら重箱のおせち料理をダラダラと食べている。
おせちは毎年母の手作りで子供の頃は当たり前だと思っていたのだが、社会人になってひとり暮らしを始めてから料理の大変さを知った。
「うま煮も最高。お母さんはなんでも作れてすごいね」
小柄でショートボブヘアの母は五十八歳になる。子供たちが小さな頃から兄弟喧嘩には介入しないという謎のポリシーを持つ人だ。
「褒めてくれてありがとう。たくさん食べてね。お父さんとふたり暮らしだと、残っちゃって困るのよ」
弟は梨乃の向かいの席で退屈そうに携帯をいじっている。グラスの緑茶を飲もうとして空なのに気づき、視線を母に向けていた。
「お茶淹れて。おせちって喉が渇くよな」
ペットボトルの緑茶は冷蔵庫の中だ。自分は動かず母を使おうとしている弟に呆れた。
「あんたね、自分で取りに行きなよ。ぐーたらしてるだけなんだから」
実家は埼玉にあり、築二十年ほどで二階建てのありふれた木造住宅だ。
リビングで座卓を囲んでいるのは梨乃と両親と弟で、兄は早朝から恋人と初詣デートに出かけて神社が相当混んでいるのか昼になっても帰ってこない。
「お母さんの昆布巻き、おいしい」
テレビの正月特番を見ながら重箱のおせち料理をダラダラと食べている。
おせちは毎年母の手作りで子供の頃は当たり前だと思っていたのだが、社会人になってひとり暮らしを始めてから料理の大変さを知った。
「うま煮も最高。お母さんはなんでも作れてすごいね」
小柄でショートボブヘアの母は五十八歳になる。子供たちが小さな頃から兄弟喧嘩には介入しないという謎のポリシーを持つ人だ。
「褒めてくれてありがとう。たくさん食べてね。お父さんとふたり暮らしだと、残っちゃって困るのよ」
弟は梨乃の向かいの席で退屈そうに携帯をいじっている。グラスの緑茶を飲もうとして空なのに気づき、視線を母に向けていた。
「お茶淹れて。おせちって喉が渇くよな」
ペットボトルの緑茶は冷蔵庫の中だ。自分は動かず母を使おうとしている弟に呆れた。
「あんたね、自分で取りに行きなよ。ぐーたらしてるだけなんだから」