天才弁護士の溺愛ミステリー♡

13 キスの約束

「じゃ、じゃあ、今回の裁判で勝ったら…
っていうのはどうですか…?」

私は勇気を振り絞って言ってみる。

「勝ったらキスする、というので間違い無いんですか…?」

「はい…」

「いやぁ!
今日は天気も良いし、青山の廃ビルの捜査に向かってから、お茶でもしますか!」

先生は急にやる気になった。

「ふふ。
そうしましょう!」

そして、私たちは青山の裏路地の廃ビルに向かった。

事件現場を見ると、廃ビルの屋上部には柵も無く、まるで突き落として下さい、と言っているようなものだった。

「しかし、何故、佐伯友子さんが被疑者として上がっているのですか?」

廃ビルを観察しながら宇賀神先生が言った。

「えぇ、それが…
彼女が第1発見者なのはもちろんですが、故・伊藤葉氏のスマホのLINEを調べたところ、彼女と昼の12時に待ち合わせの記録があったんです。
そして、その12時というのは、ちょうど伊藤葉氏が突き落とされて殺された時間だったんです。」

私は警察の情報を説明する。

「なるほど。

しかし、何故昼の12時に突き落とされた、と分かるのでしょうか?
誰か物音でも聞いたんですかー?」

宇賀神先生は言う。
まさにその通りの疑問が湧く所だ。
しかし、それにはカラクリがある。

「それがですね。
伊藤葉氏のはめて居た腕時計が昼の12時でピッタリ止まっていたんですよ。
多分突き落とされた時の衝撃で止まったんだと思います。
検察側はLINEの記録と壊れた腕時計を証拠として上げてくるはずです。」

「ふぅん、なるほど…」

「先生の方で、証拠となる物が必要ですよね。
やっぱり。」

「まぁ、そうでしょうね。
2人は同じ大学だったんですよね?」

「えぇ、慶應大学ですね。
向かいますか?」

「コーヒー飲まないと動けません。」

「どう言う体質してるんですかっっ!?」

しかし、私も少し休憩したかったので、青山のいつものカフェに向かった。

「先生ってば、本当にコーヒー好きなんですよね。」

「あなたは本当に事件が好きですよね。」

先生は嫌味っぽくそう返した。

「どうせ、私は仕事バカですよぉー。」

「そう言う所、好きな反面、憎らしいです。
仕事バカでもアホでも構いませんが、僕よりは優先しないで下さい。」

先生はブラックコーヒーを飲みながらそう言った。

珍しくコーヒーゼリーのデザートも注文しているようだ。
コーヒーはブラック派だが、甘い物がダメな訳じゃ無い。

私もティラミスを頼んだ。

「もちろん、先生を優先しますよ?」

私はにっこりとそう言う。
嘘だけど…

「全くあなたって人は…
罪な方だ…」

先生はやりきれない表情になり、また、コーヒーを飲んだ。
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