天才弁護士の溺愛ミステリー♡

7 第2回裁判

「まず、和臣さんは傍聴席にいらっしゃいましたから、父上の五郎氏が末期ガンだったのはもうご存知ですね。
以前から知ってらっしゃいましたか?」

「いいえ…
父は出かけることも多かったですが、運転士は口の固い人物でして…
そんな事は知りもしませんでした。
お恥ずかしながら…」

和臣さんは言った。

「そうですか。
それから、アイスピックについてですが…
アイスピックは常にキッチンにあったのですか?」

「はい、僕と父の五郎はよくウイスキーのロックを飲んでまして…
その日確か、お手伝いさんの麻生さんが休みの日だったかな?
父と一緒に飲もうという話になりまして…
でも、氷はあるけど砕いてなかったので、母に頼んだんです。
指紋はもしかしたらその時の物かもしれません。
その後、アイスピックは行方不明になっていましたから…」

「それが本当だとしたら、重大な事実ですよ…!

そして、アイスピックは事件当日まで見つからなかった、そうですね?」

「はい、おっしゃる通りです。」

和臣さんは頷く。

♦︎♦︎♦︎

そして、第二回目の裁判が始まった。

「良いですか?
みなさん?
弁護人は、斉藤五郎氏が自殺したのでは無いか?と弁論をしましたが、凶器のアイスピックは彼の背中心臓部分に刺さっていたのですよ!?
みなさん、背中の上部に手が届く人がどれくらい居ますか?
五郎氏はしかも55歳という高齢です。
果たして、自分で背中を刺せますかな?

いいえ、そんな事は不可能です。

ここで、検察側の証人・前川久(まえかわひさし)さんへの尋問を請求します!」

「では、証人の前川久さん、前に出てください。」

裁判長が言う。

「前川さん、あなたのご職業は?」

「整体師です。」

「故人・斉藤五郎氏とは面識がありますか?」

「えぇ、私の整体に通っていただいてたので、よく。」

「どのような施術をしましたか?」

「肩こりがひどいのと、あと五十肩だったので、軽い伸び運動なんかを混ぜて…」

「聞きましたか!?
五郎氏は五十肩です!
さぁ、どうやってアイスピックを背中に刺すのでしょうか!?
ますます不可能じゃありませんか!」

兵藤検察官は声を大にしてそう言った。

まずい…
風向きはあちらに吹きつつある…

「先生…」

「僕は勝ちますよ…」

そして、先生が席を立った。

証人として斉藤和臣さんが出る。

「和臣さん、あなたは大のお酒好きですね?」

「はい。」

「そして、父親の五郎氏も酒好きだった?」

「はい、その通りです。」

「事件に関係の無い尋問です!」

兵藤検察官が手を挙げる。

「発言を却下します。
弁護人は事件との因果関係に気をつけて尋問を続けてください。」

裁判長が言う。
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