天才弁護士の溺愛ミステリー♡

8 膠着状態

「ありがとうございます、裁判長。
では、質問を続けます。
お酒は何を飲んでいましたか?」

「ウイスキーです。
ロックで飲むのが、親父も僕も好きでした。」

「氷を大量に使うわけですね?」

「はい、氷は大きいのを業者から買って、いつもアイスピックで割っていました。
その日は、お手伝いの麻生さんがお休みで…
母に氷を割ってもらうように頼みました。」

「なるほど、指紋はその時のものだったのかもしれない…
そうですね?」

「可能性はあると思います。」

「その後そのアイスピックを誰かが使いましたか?」

「いいえ、アイスピックはその日を最後にどこかに消えてしまいましたから…」

「これは興味深いですねぇ。
まるで、斉藤洋子被疑者の指紋が付いたアイスピックを誰かが隠したような…
そして、事件当日にアイスピックは現れた…
そうですね?」

「はい、その通りです。」

「以上で尋問を終わります。」

やった!

上手い!

だけど…
今日の所は検察官に軍配が上がりそうだ…

だけど、まだこちらにも勝機はあるわ!

「先生、お疲れ様です!」

「惚れます?」

「いえ、それは無いですけど。」

私はキッパリ言う。

「やれやれ、検察官よりも手強そうだ…」

先生はチャーミングに肩をすくめた。
うーん、小悪魔男だなぁ。
これにやられた女性は星の数、だ。

♦︎♦︎♦︎

車内にて。

「先生、しかし、膠着状態ですよね?
この後はどう攻めますか?」

「うーん、そうですねぇ。
僕の恋も膠着状態ですが…」

「先生、真面目に考えてください。」

「大真面目ですけどねっ!
そうですね、自殺した、という証拠が無いと、やはり厳しいでしょうね…
何か決定的な証拠が…」

「では、事件現場に行ってみましょう!」

「えぇぇぇぇぇ!?
今からですかぁ!?
もう疲れましたよ…」

「…頑張ったらキスしてあげるかもしれませんよ?」

「行きましょう!!!」

「《《かも》》ですけど。」

「少しでも可能性があるなら、行きます。」

キッパリとそう言う先生に、なんだかおかしくて笑ってしまう…

そして、事件現場に向かった。

和臣さんは裁判の帰り道にどこかに寄ったらしく不在で、お手伝いの麻生さんが対応してくれた。

「何度見ても同じですね…」

「そりゃそうでしょう。
しかし、何か見落としがあるはずです。」

「うーん、見落とし…?
あれー?
この本棚、この段だけ緩いなぁ…?」

私は言う。

「は?
どう言う意味です?」

「ほら、ここに、2冊分くらいのスペースがあるんですよ。
他の段はぎっしり詰まってるのに。」

「確かに…
麻生さん、五郎氏の本棚は元々スペースが空いてたんですか?」

先生は麻生さんに尋ねた。
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