winter song 〜君に捧ぐたった一つの歌〜

因縁

〜side 拓人〜



愛奈の為にたった一つの歌を作ろうと決意した僕は、その日からまた歌作りに没頭した…



いくつかの音楽レーベルにも音源を持ち込んで自分の歌を営業し、動画配信サイトにも投稿を始めた…



葉山ホールディングスの専務取り締まり役として父親の後を継いで働くように言われている僕は、確立された自分の立場と、五年間で得た富と栄誉を捨てられるのか…



僕は自分の心と葛藤した…



「兄さん…」



弟の隆人が後ろから僕に話しかける



隆人は去年の人事で子会社を束ねる統括部長に就任していた…



僕と違い隆人は父に似て非道な男らしい性格で、この春に取引先のお嬢さんとの結婚も決まっていた…



過去の女性も忘れられず、虫も殺せない程なよなよとした性格の僕とは違うのだ…



「何だ?お前が話しかけるなんて珍しいな」



隆人と僕は二つ違いだが、昔から遊びの趣味も、育てられ方も昔から僕とは何一つ違っていた…



「たまには夜ご飯でも食べない?兄さんに話があるんだ」



隆人が僕を誘ってくるなんて本当に珍しい…



「分かった…夜料理屋の席をとるから、たまには一緒に食事でもしよう」



珍しいなと思いながら、夜小料理屋の席を取り、弟の隆人と食事に行く事になった…







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