winter song 〜君に捧ぐたった一つの歌〜

同棲

拓と暮らし初めて2ヶ月が経過していた…



私と拓は気持ちを確かめ合い、恋人同士になった…



私達は家事と仕事をお互いに分担して、それなりに上手く生活している



家の事全般を担うのが拓で、私は専ら働くのが専門だ…



拓の家事は完璧で、家の事を何でもこなしてくれる生活に私は慣れきっていた…



「愛奈…好きだよ」



「拓…拓…好きだよ」



拓が私の上で切なく囁く…



行為の時に愛の言葉を切なく囁くのが拓の癖だった…



私達はお互いの気持ちを確かめるかのように行為を重ねた…



身体を重ねる度、お互いの体温を感じる…



私達はお互いがお互いに惹かれ合い、強く求め合った…



先のこともあまり考えず、欲望のまま、求め合うまま、二人で肌を重ねて、ただただ愛欲に溺れていた…



拓が私の上で揺れ、激しく求め合った私達は、二人で果てた…



行為が終わり、服を着ながら拓が話しかける…



「愛奈は欲しい物とかないの?」
   


愛奈が物を欲しがるとかってあんまりないから…



突然言われて私は考えてしまう…



「うーん?私あんまり昔から物とか欲しがらないから…」


 
強いて言えば…



「拓の歌。私に歌を作って欲しい…」



拓はくすっと笑っている



「愛奈らしいね。普通女の子ってアクセサリーが欲しいとか、バックが欲しいとか、物をねだるんじゃないの?」



愛奈には物欲がないんだね



そう言うと拓はやっぱりクスッと笑った



「うーん?物だったら、自分で買えるかなって?どうせ貰うなら、拓にしか貰えない物がいいもん」



それに…?



「私昔から、どっちかに決めるのが苦手で…こっちとこっちどっちがいい?って聞かれるのが一番苦手なの…自分を持ってないのかな?優柔不断とか言われるけど、どっち?って言われると本当に迷っちゃうの」



私は気まずそうに答えた



《どっちつかずの愛奈ちゃん》の仇名がついていた幼少期を思い出す



「そっか…じゃあ愛奈がどっちか迷った時は、僕がどっちにするか決めてあげる。だってどっちか選択しなくちゃいけなくなったら、愛奈が困るでしょ?」



拓はそう言うとやっぱり八重歯を見せて笑った



うん。じゃあこの先私が迷ったら、どっちにするか拓が決めて



拓と一緒なら、この先私がどっちに決めるか選択に迷うことがないから…


うん



そう言って私達は笑いながら抱き合った…



拓は私に歌をプレゼントしてくれると約束してくれた…



私はいつか拓が私に私だけの歌をプレゼントしてくれる事を楽しみにしていた…

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