winter song 〜君に捧ぐたった一つの歌〜

葛藤

〜side拓人〜



「もう二度と娘の前に顔を出すな」  



5年前愛奈のお父さんにそう言われ、僕は自分のしてしまった事の重さに気付いた…



「君のご両親に連絡させてもらう」



そう言われて、僕はそれだけはできませんと懇願したが、「定職にも就いてないフリーターの君に何ができるんだ。君に責任が取れるのか…」



そう言われ、僕は仕方なく両親の連絡先を愛奈のお父さんに差し出した…



僕は何て無力なんだろう…



愛奈の事を沢山泣かせ、大事な身体を傷付け、幸せにするどころか辛い思いをさせて不幸にすることしかできなかった…



愛奈の両親から連絡を受けた家の両親から、僕の携帯に連絡が入った…



「お前は何をやってるんだ。もう親の援助は受けないと家を飛び出しておいてこの様か。葉山家の面汚しが…」



お前はもう二度とそのお嬢さんに会うな



今後の事は追って連絡する  



家から一歩も出るな   



そう父親にも罵られ、僕は仕方なく大嫌いだったあの自宅に帰る事になった…



拓人…



優しい母さんが心配している…


 
僕の名前は葉山拓人



日本で名高い葉山ホールディングスの長男として生まれた…



長男として生まれたのに、虫も殺せないほど性格が優しく、そんなんで葉山を背負っていけるのかと、よく父親に叱られた



僕の性格は母親譲りで、お母さんはいつもお父さんの顔色を伺い、お前がそんなんだから僕がこうなんだとお母さんはお父さんにいつも怒られていた



そんな母さんに申し訳なくて、僕は父さんに逆らわないように生きてきた…



お前は葉山家の長男なんだからと常に言われ、育てられてきたけど、僕は全く会社を継ぐ器になれない



呆れて半ば諦めた父親は、自分と性格の似た弟の隆人を可愛がるようになった…



隆人はお父さんの期待に応えるかのように後継者としての器をめきめきと発揮していった…



僕は父さんにとっていなくてもいいような存在だったが、母さんは僕にいつも優しくて、拓人はそのままでいいのよといつも優しく僕を庇ってくれた



形式にでも行かされた大学で僕は経営学を学ばされ、、僕は嫌々ながらも4年間大学に行かされた…



大学を卒業したらアメリカに留学しろと言う父親に逆らって、僕はミュージシャンになりたいからとギター一つで家を飛び出した



元々僕なんかいらない存在だし、葉山家の援助も無しにやれるものか、やれるものならやってみろと家を飛び出た僕は、気ままな日雇い生活を送った…



葉山家の援助なしで暮らしたかったからだ



そんな生活の中、愛奈と知り合った



僕の歌のファンだと言ってよく歌を聴きにきてくれる愛奈に僕は一目惚れした…



綺麗だなと思った…



知り合う内に僕と愛奈はよく喋るようになり、こんな僕を愛奈は家に招き入れて住まわせてくれた



愛奈は酒飲みでズボラで家事が苦手だけど、心がすごく優しくて、僕は愛奈の事がすぐ好きになった



昔から母さんや家政婦さんと料理や炊事、洗濯をするのが好きだった僕は、家事全般を買って出て、僕は家事係になった



愛奈は面倒くさがり屋でズボラだけど、僕が家事をしてくれると助かると言って、僕達は2人で一つになった



僕にとって愛奈はどちらが欠けてもいられない片割れのような存在になって、僕らが惹かれ合うのに時間は掛からなかった…









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