社内では秘密ですけど、旦那様の溺愛が止まりません!

地味な男の逆転劇

「焦げてる!」

思わず悲鳴を上げてしまう。
昨日はあの後久しぶりにゆっくりと夕食を食べた。噂が治ったわけではないけれど、なんだか2人ともモヤがかかったままだったのが何かが晴れたような気持ちになれた。結局のところ解決策は今のところ出ていない。それでもざわついていた気持ちが整理されたのだろう。
半熟の目玉焼きを作ったはずがお弁当を詰めている間に目を離してしまい、端からカリッと茶色くなってしまった。

「見事な焦げっぷりだな」

私の声にキッチンを覗きにきた亮くんは笑っていた。

「ま、焦げてもこれはこれでアートだな。どちらも同じ焦げじゃなくて少し違う。すごいな」

そんなことを真顔でいう彼の言葉に思わず笑ってしまう。

「はいはい。座ってください。ご飯ですよ」

私はそういうとお皿に目玉焼きを乗せる。その隣に野菜とウインナーを添えた。ご飯と味噌汁をさっとよそうと朝食の出来上がりだ。

「いただきます」

並んで手を合わせると食べ始める。ようやく日常が戻ってきた気がする。
横目に私が詰めた弁当を見て亮くんが笑う。

「小春、弁当のおかずを詰め込みすぎてしまっていないみたいだぞ」

「閉まらないほどの愛情が詰まってるの〜」

笑ってそう返すと「そうだよな。煮卵で溢れかえりそうだよ」とさらに切り返される。
食事を終えると彼は家を出る準備をする。いつもの通り、私よりも一本早い電車。
ネクタイを絞めながら私に向かって、

「小春、昨日は話せてよかった」

「うん、私も。話してくれてありがとう」

彼は少し照れ笑いを隠すように私の視線から目を外す。
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