Love Sky Travel

10 ブリーフィング

side仙石直哉

その日のフライトで。
機長2人と副操縦士のブリーフィングが行われていた。

搭乗するのは、俺、33歳の若手機長・橋本拓也、山根勝の3名である。

「シップの準備は予定通りですね。」

橋本機長が婚約指輪の付いた細長い指で、機体の図面を差した。
男から見ても美麗という言葉がピッタリの橋本機長が婚約したのは、つい最近の事だった。
それまではかなり女遊びが激しかったものの、子供好きの一面もあり、結婚を決めたのだとか。

「はい、先程()()()()との報告を受けました。」

山根副操縦士が真面目に答える。

「了解です。」
「了解。」

橋本機長と俺がそう頷いた。

「さてと、気候は?」

俺が尋ねると、山根副操縦士がまた答える。

「低気圧の接近で南西の風が徐々に強まるようですが、エンルートのスカイはクリアです。
タービュランス情報も今のところ入っていません。」

「そうか。」

俺と橋本機長は最終的な確認を終わらせると、フライトプランについて、『特に問題無し』と、書類にサインした。

次にCAとのブリーフィングに向かう。

「そう言えば、あの可愛い子ちゃんとはどうなったんですか?」

山根副操縦士がかなり面白がって尋ねた。

「へぇ、可愛い子ちゃん?
興味ありますねぇ、その話。」

「何でも無い。
もうブリーフィングが始まるんだから、無駄口は叩くな。」

俺が仏頂面で答えると、2人は顔を見合わせた。

「しかし、あなたは…」

橋本機長が言いかけてやめた。

「いずれ、彼女にも話すさ。
今はまだ…」

「そうですか…
まぁ、上手くいったら僕の婚約者とダブルデートでもしましょう。」

「…あぁ。」

そうだ、俺には彼女に伝えなければならない事があるんだ…
それを思うと、タービュランス(乱気流)に突入する時のように気は重かった…

CA達は紅茶を淹れて待っており、すでに飛行機内の配置についていた。

彼女ももちろん居る。
この間は薄いピンクの口紅だったが、今日は少し濃い。
だけど、それも似合っていた。

少しCAらしくなってきたようだ。

俺が彼女にアイコンタクトを取ると、彼女は軽く頷いた。

橋本機長がCAに留意事項などを説明し、チーフパーサーとも意見を交換した。

最後に俺が挨拶する。

「今回のフライトは、私、橋本機長、山根副操縦士、の3名の操縦で行う。
タービュランスの情報は今のところ無いが、急な揺れにも冷静な対応をして、お客様を安心させて欲しい。
パイロット、CAが一丸となって、このフライトを安全に進めていこう。
以上だ。」

そして、飛行機に搭乗する時効となった。
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