Love Sky Travel

13 暗い影

しばらくすると、キッチンからいい香りがしてきた。

「水瀬、バジル大丈夫だよな?」

「え、むしろ好きですよ。」

「そうか!
出来た!
鴨と玉ねぎのトマトバジルソースパスタ!」

「えぇぇぇぇぇ!?
めっちゃ美味しそうー!!!
すごい!」

玉ねぎが入ったトマトパスタに鴨が3枚上に並べられており、バジルソースが鴨の上とお皿のサイドにトッピングしてある。
鴨もバジルも大好物の私はテンション上がる。

「食べるか。」

「はい!」

私たちはコーンスープとパスタを食べた。

「しばらく俺が通うよ。」

「え…?」

「だから、左手が不自由だろ?
フライトの無い日は通うから。」

「いえ…
そこまでしてもらう訳には…」

「あの時…
操縦桿を握ってたのは俺なんだ…
責任取らせてくれ。」

「それは、機長としての責任感…ですか?」

私は尋ねた。
違うって言ってくれるのを、心のどこかで期待していた。

だけど…

「そうだ。」

彼は言った。

楽しかった時間に暗い影が落ちた気がした。

そして、食器を片付けると彼は帰って行った。

それから、しばらく仙石機長は私のマンションに通ってくれた。
だけど、別にキスする訳でもなく、ただ家事をこなすだけだ。
何も進展の無いまま、私の怪我は回復して、また仕事の日々が戻ってきた。

その日は国内線の担当になり、羽田から沖縄のラインだった。
機長は仙石機長と山根副操縦士だった。
ロサンゼルスなどのロングフライトでは、機長3人体制の事が多いが、国内線は基本的には2人体制だ。

朝のブリーフィングから始まった。

里田チーフパーサーがみんなに挨拶する。

「おはようございます。
本日チーフパーサーを担当する里田です。
みなさん、健康状態はよろしいですか?
服装もお互い確認してください。
IDの連携も合わせて行ってくださいね。」

私たちは服装の確認をし合った後、ポジションアサイン通りに座り直す。

そして、機長と副操縦士が現れた。

再度ブリーフィングを行い、沖縄への空の旅が始まったのだった。

今日はジュニアパイロットが2人、それから、目の不自由な方がいらっしゃるので、補助は必須だ。

搭乗する時に仙石機長が私に話しかける。

「また、一緒にフライト出来て嬉しいよ。
頑張ろう。」

「はい!」

そんな一言でも…
例え、私に好意が無くても…
嬉しいものだ。

沖縄線では、リゾートに出かけるお客さまが多い為か、どこと無く機内にもリラックスしたムードが漂っている。
沖縄線ではアイスクリームの提供も許可されている。

早速ジュニアパイロットの1人がアイスを食べている。
ふふ、可愛い。
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