Love Sky Travel

14 トラブル

そんなのんびりした空気が一変したのは、羽田を出てから2時間が経ってからの事だ。

「お姉ちゃん…」

ジュニアパイロットの1人が私のエプロンを掴んで呼び止める。
可愛いな、と思いつつ、「何かな?」と尋ねると…

「なんだかきついよ…」

と、その男の子は目に涙を溜めて言った。

「えぇ!?」

私は若干取り乱しながらも、その子の額に手を当てる。
熱い!

大変だわ!

「桜井CA!
大変です!
お熱を出した子が!」

私が大きな声で言うと…

「落ち着いてちょうだい!
体温計があるから、正確な熱を測りましょう!」

桜井CAはテキパキと氷枕と体温計の準備をした。

熱を測ると、なんと、39.6°c。

これは、大変だと、CAの間でざわめく。

「ここは、海の上だから、寄港することはできないわ…
やはり、この機内で対処するしか無いわね…」

桜井CAが言う。

「でも、どうやって…!?」

「チーフパーサーに連絡して、お医者様を探してもらうわ。」

そして、チーフパーサーによってアナウンスされ、1人のビジネスクラスのお医者様が駆けつけてくれた。
幸運な事に解熱剤を持っており、男の子に飲ませると、彼はしばらくした後すやすやと眠った。

よ、よ、良かったぁ!

「水瀬さん?」

「は、はい。」

「機内では色々なトラブルが起きるものよ。
その度に動揺していたら、お客さまも安心できないの。
大きな声でトラブルを叫んだり、真っ青な表情をするのは、厳禁よ?
いいわね?」

桜井さんに叱られて、私はかなり落ち込んでしまった。

その後、無事に沖縄に到着し、その子は迎えにきた祖母と病院に行ったらしい。

はぁぁぁあ…
私ってCA失格ね…

そう思ってステイ先のホテルでソファでゴロゴロしていると…
トントンとドアがノックされた。

「えーと、はい。」

そこには、仙石機長が居た。

「よっ…!
ほら、せっかく沖縄に来たんだし、どこかに出かけないか?」

「どこか…?」

うーん、あまり楽しめる気分じゃ無いけど…

「デートに誘ってるんだけど…」

「それは分かりますけど。
じゃあ…」

私はある場所をリクエストした。
レンタカーでその場所に向かう。

その場所とは…?

そ・れ・は!

栄町市場だ!

沖縄に古くからある市場で、中々の穴場だが、地元民からも観光客からも人気は高い。

「食べ歩きしましょう!」

私は少し元気になってそう言った。

「色気もくそもねぇな…」

苦々しい顔で言う仙石機長に…

「あら?
きっと楽しいですってば!」

と、嗜めて、栄町市場に入って行った。

「あ、野菜スムージーですって!
私グリーンスムージー取った!」

「え、俺もそれが良い…」

「ダメですよ!
早いもの勝ちですから!
仙石機長は、ゴーヤスムージーで!」

「ずるいだろ!」

とか何とか言いながら、言われた通りにスムージーを注文してくれる仙石機長。
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