Love Sky Travel

16 仙石機長は…

楽しかった休日も終わり、その日は沖縄発羽田行きの便に乗る予定だった。

私は仙石機長と両想いになって多少浮かれていた。

だが…

朝のブリーフィングの前に少し早く那覇空港に着いた私は、ラウンジのカフェで過ごしていた。
すると、同じく早出してきた梅野CAが「相席いい?」と聞いてきた。
私はもちろん、OKした。
梅野さんは、チーフも務めるベテランCAだ。

「今日のフライトは仙石機長と山根操縦士よねぇ。」

梅野さんはそう言ってコーヒーを飲んだ。

「えぇ、2人とも素敵な機長で…」

「あらあら、山根操縦士は彼女居るって話よ。
それに、仙石機長は結婚してるしねぇ。
あーぁ、どっかに良い男居ないかしらぁ?」

え…
仙石機長が、()()…!?
うそ…よね?

何かの聞き間違いだわ!
そうに決まってる!

「あの…
仙石機長が結婚って…?」

「あぁ、確かに既婚者のはずよぉ。
私結婚式にもお呼ばれしたし。
それに、奥様との面識もあるもの。」

私はその場で固まってしまった。

「水瀬さん?
水瀬さん、どうかした?」

「いいえ、何でも無いんです…」

それから、どうやって羽田までのフライトを過ごしたのか、はっきり言って記憶になかった。
ジュースはこぼすし、お客様にはぶつかるし、散々だった事は間違い無い。

それでも、なんとかフライトを終えて…

仙石機長に電話した。

『おぅ、フライトおつかれ。
どうした?』

安心する、透き通った低音の声。
でも、今は…

「仙石機長が既婚者だって…聞いて…

ハハハ…!
そんな訳無いのに…!
ねぇ!
嘘ですよね…!?」

私は半泣きでそう問い詰めた。

だけど…

『…それは…』

なんで…?
どうして、はっきり結婚して無いって言ってくれないの?

じゃあ、私は愛人!?

「酷過ぎます!
大っ嫌い!」

私は泣きながら電話を切った。
仙石機長から何度か電話があったけど、無視して、携帯の電源を切った…

家に帰り、何も食べないまま、化粧も落とさずにソファに横になった。
悲しいけれど、悔しさもあった。
私は都合の良い存在なんだと思うと、あの告白も、全てが嘘だったと思うと…

悔しかった…

私は仙石機長をブロックして、着信拒否まですると、フライトの疲れの為か、やっと眠る事ができた…

翌朝…
すごい顔だ。

とりあえず化粧を落として熱いシャワーを浴びた。

だけど、さっぱりしたのは身体だけで、心には泥のような不安がまとわりついていた。

好きだったのに…
ほんとうに…

その時、インターホンが鳴った。

え?
仙石…機長…?

今更何の用よ!!!

『話があるんだ!
頼む、チャンスをくれ!』

私は…
ドアを開けた…
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