Love Sky Travel

19 濃霧のパリ

その日、相変わらず国際線に乗った。
今回の行き先はフランス・パリだ。

朝のブリーフィングを終わらせて、機内に搭乗し、チェックを済ませると、お客様達が搭乗を始めた。

「いらっしゃいませ。」

お客様をスムーズに誘導しながらそう声をかける。
この搭乗の瞬間が私は1番好きだ。

飛行機は順調に離陸して、フランス・パリに近づいていく。
そこで、チーフパーサーから連絡事項があった。

「皆さん、お客様にはまだ知らせてませんが、フランス・パリのシャルル・ド・ゴール空港の上空は霧に覆われています。
そこで、ILS進入を決行する予定です。
お客様には、着陸の際多少の振動があるかもしれません。

皆さん、CAはお客様にご安心いただけるよう、落ち着いた態度で臨むようにお願いします。」

チーフパーサーが言った。

えーと、ILS進入って何だっけ…？

確かに勉強した記憶があるのに、完璧には出てこなかった。
しかし、それをお客様に聞かれた場合はまずい。

「桜井さん、ILS進入って何でしたっけ？」

「あらあら、CAの常識よ？
だめよ、ちゃんと覚えてなくちゃ。
ILS進入は、霧などが濃い時に空港に着陸する手段よ。
ILSとは空港近くの地上施設から指向性誘導電波を発射し、飛行機の着陸をスムーズに導くシステムよ。

つまり、光を頼りに着陸するってことね。
ゴー・アラウンドもあり得るし、機体は多少揺れるわよ。」

桜井さんはそっの無い返答をした。

「えーと、ゴー・アラウンド…？」

「あなたねぇ…！
ゴー・アラウンドって言うのは、着陸を断念して再上昇をする事よ。
その時に機体が揺れるのよ。
滑走路が見えなければ、ゴー・アラウンドはそう珍しい事じゃ無いわ。
だからこそ、CAとして毅然とした態度が必要です。
いいわね？」

「はい！」

私は元気よく答えた。

「まぁ、ベテランの野島機長と完璧な仙石機長が居るから大丈夫よ。
それよりも！」

「？」

「あなた、仙石機長とどうなってるの？
たまに目配せしてるの、ちゃーんと気づいてますからね！」

桜井さんが茶目っぽくそう言った。

「そ、そ、それは…
その、付き合いはじめて…
桜井さんには言おうと思ってたんです…！」

「ふぅん？
やっぱりそうなのねぇ。
やっと、仙石機長も自由になれたってことね。
おめでとう。」

「あ、ありがとうございます…！」

「さぁ、ここからはCAとして頑張りましょう！」

「はい！」

そして、シャルル・ド・ゴール空港へのILS進入が始まった。
シートベルトを締めているか、しっかりと確認する。

機体が揺れても決して悲鳴はあげない。

そして、無事にILS進入が終わり、シャルル・ド・ゴール空港に着いた。