Love Sky Travel

2 ドジなCAに

side仙石直哉

俺はその日不機嫌だった。

そんなイライラする中、朝のブリーフィングで新人CAに足を踏まれて押し倒された。

水瀬鈴、とか言ったか…?
俺の不機嫌に油を注いだ彼女は…
しかし、可愛いかった。

バンビのような大きな琥珀の瞳が俺を怯えながら見つめ、唇は桜色で少しぽってりとしていたか?
とにかくタイプだと思った。

だが、俺は…
俺には…

そんな事を思い、ドジなやつだな、と言う印象を持ちながらも乗員室に向かった。

そこでは、CAが淹れてくれたコーヒーを機長や副操縦士達が談笑している。

「仙石機長!
おはようございます!」

副操縦士の佐藤君が話しかけてくる。

「あぁ、おはよう。」

俺はコーヒーを受け取りながら、そう答えた。

「今日のフライトは何便ですか?」

「あぁ、12便だ。」

俺は腕時計を見ながら答えた。

「そうなんですね。
俺は10便です。
今日の太平洋の天候は快晴との報告を受けているので、良いフライトが出来そうです。」

佐藤君は言った。

「そうだな。
一応エンルートを送ってくれないか?」

「もちろんです!

あれ?
シャツに口紅が…?」

佐藤君が俺のシャツを指差す。

くそ…
あの時のか…!?

「いや、これは…」

「仙石機長も隅に置けませんねぇ。」

ニヤニヤしながら言う佐藤君。

いや、だから、違うんだって!

「さっきCAに押し倒されてだな…!」

「えぇ!?
CAに押し倒されたぁ!?
なんて羨ましい!!!」

いや、だから、違うって!

「いや、そうじゃなくて…!」

「あ、じゃ、俺そろそろフライトの時間なので失礼します!」

佐藤君は誤解したまま去って行った。

全く…
あのおっちょこちょいCAにも困ったもんだな…

俺は着替えのシャツを出した。

「仙石機長、そろそろフライト準備の時間です。
機内にお願いします。」

ベテランCAの桜井君が知らせてくれる。

「あぁ、今行こうと思ってたところだ。
ありがとう。
ところで…
あの、CAは?」

「は…?」

キョトンとする桜井君。

「あ、あぁ、水瀬ですね。
大変失礼しました…
私からも注意しておきますが、初めてのフライトなので、大目に見て上げてください。」

「あぁ、注意する必要はない。
頑張ってくれ、と言っておいてくれ。」

「あら…
仙石機長がCAにそんな言葉をかけるなんて、お優しい事もあるんですね…?」

「俺は優しいだろ…?」

「そんなイメージは正直ありませんでした…
わかりました、伝えておきます。

あ、彼女のステイ先の部屋番号も必要ですか?笑」

「おいおい、冗談もそのくらいにしてくれ…
俺はただ頑張ってくれと伝えてくれと言っただけだろ。」

「はいはい、分かりました。
では、フライトで。」

桜井君はおかしそうに去って行った。
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