Love Sky Travel

4 コーヒーコール

「し、し、失礼しますっ!
コーヒーです!
仙石機長、野島機長、山根副操縦士!」

私はコックピットで言う。

「あぁ…君か…
何事かと思ったよ。
運動場じゃ無いんだから、そんなに大きな声でコーヒーコールしなくても聞こえている。」

仙石機長は苦々しい顔でコーヒーを受け取る。

自動操縦中のようだ。

「おっ、噂のCAっすね!
ありがとうございます!」

山根副操縦士がにこやかにコーヒーを受け取った。

「噂の…?」

「初フライトで機長を押し倒した!
いやぁ、伝説っすねぇ…!」

「こら、山根揶揄うな。
その子は冗談が通じないんだから。」

仙石機長がたしなめる。

冗談が通じない!?
そんな事ないし!

「あはは!
今度は唇を奪うかもしれませんよ!

…あはは…」

3人の視線が痛い…
どうして私ってこうから回っちゃうんだろ…

「…ぶぶっ!
良かったじゃないか、仙石君、奪ってもらいたまえ!」

しかし野島機長が笑ってくれた。

「野島さん!
だから!
やめてくださいって!

コーヒー…
俺の分が無いんだが…?」

「あ、はい!
すいません!
あります!」

私は急いでコーヒーを渡した。

「あぁ、ありがとう…
…どうだ?
CA1日目は?」

仙石機長が尋ね、何故かニヤニヤして顔を見合わせる野島機長と山根副操縦士。

「え、はい。
桜井CAも優しくて…
何とか出来てます…

あの…
頑張ってくれ、って言ってくれて…
ありがとうございました!」

「いや、別に…」

「おいおい、デートの約束ならロスに着いてから勝手に決めてくれよ?
ここはコックピットだぞ?」

野島機長がニヤニヤして言う。

「「そんなんじゃ…!」

私と仙石機長の声が重なった。

野島機長と山根副操縦士は笑いを堪えている。

そして、何とかコーヒーを渡し終えて、エコノミークラスに戻った。

「あぁ、水瀬さん、遅かったから心配してたのよ。
ちゃんとコーヒー渡せた?」

桜井さんが言う。

「はい、もちろんです!」

「そう、なら良かったわ。
ドリンクサービスをするから、私についてきてね。
次からは1人でやってもらうんだから、しっかり覚えるようにね。」

「はいっ!」

そして、お客様にコーヒーやら、オレンジジュースやらを配り終え、僅かな休息に入った。

私はスマホを取り出して漫画を読むのがいつもの楽しみだった。
今ハマっているのは、ファンタジー漫画。
ほのぼの系や領地経営が好きだ。

私が漫画を読んでいると、仙石機長がやってきた。
休憩のようだ。

「何読んでるんだ?」

「えっと、ファンタジー漫画です!」

「へぇ…
俺も好きなんだよ。
レベル999とかな。」

「えー!
私も見てます!
あれって、主人公が強くなるのが胸熱ですよね!
それに…
脇役の個性も豊かで…」

ペラペラと喋り出す私を仙石機長は絶滅危惧種でも見るような顔で見ている。
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