敏腕エリート部長は3年越しの恋慕を滾らせる
密甘な彼が、実は御曹司?!
 翌朝、改めて営業部へと謝罪をしに行く美絃。
 
 TK社はアパレルやスポーツ用品を扱う商社で、WING社のゴルフ用品の大半はこのTK社を通してゴルフ場や関連施設へと納品されている。
 受注キャンセルが行われてしまった被害総額はおよそ八億円。
 とてもじゃないが、美絃がどうにかできる額ではない。

 これまでに築いて来た信頼関係があったからこそ、納期を延ばして貰えたが、その納期も間に合わなければ、完全に信頼を失うだろう。

 営業部の担当者からお叱りを受けて部署に戻った美絃は、給湯室で皆の分の珈琲を淹れていると。

「高岡さんのおかげで、今日も残業かしら~?」
「っ……」

 ドアに凭れながら、望月さんが蔑むような視線を向けて来た。

「あなたみたいな冴えないOLが、郡司部長みたいな高嶺の花に近づくから、気がそぞろになって仕事が疎かになったんじゃないの?」
「っ……、私は仕事を蔑ろにしたことは一度もありません」
「だったら何故、ミスが起きたのかしら……?」

 言い返す言葉がなく、美絃は下唇をぎゅっと噛みしめた。

「彼が優しくするから勘違いしてるんじゃないの?」
「……」
「身の程を弁えなさいよっ」

 桜色のネイルが施された手が頭上へと持ち上げられ、美絃の顔目掛けて振り下ろされた。
 美絃は咄嗟に目を瞑り、身構えていたのだけれど……、一向にどこにも痛みはない。
 恐る恐る目を開けると、驚愕した表情の望月さんが目の前にいて、彼女の振り上げた手をなんと千尋さんが掴んでいた。
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