哀しみのオレンジ

EPISODE1 2人の執行人

 2026年10月。この日本では配偶者による暴力、いわゆるDV(ドメスティックバイオレンス)の被害件数は増えている一方で主に男性から受けるケースが多いだろう。女性から受けるケースも中にはあり、被害受ける理由は従わなければ何をされるかわからない恐怖、まだその人を愛したいから許してしまうなど様々だろう。そして、東京都内に住む一組の新婚夫婦も例外ではない…

 結婚したばかりの神戸真美(22)は職場である銀行へ出勤すると
「おはよう神戸さん!」
「ひぃ…おはよう、ございます…」
 男性上司から朝の挨拶をされただけなのにビクビクしてしまう彼女の表情はとても普通じゃない。それにまだ10月でそれほど寒くなっていないのに厚手のジャンパーを脱がずに働いている。当然上司が心配しないはずもなく
「神戸さん…どうしたんだい?最近元気ないみたいだけど」
「何でもないです…大丈夫ですから…」
 彼女が結婚したばかりということは誰もが知っており、彼女が元気を失ったのはちょうど結婚したタイミングからだった。夫婦生活がうまくいっていないのか?直属の上司である川﨑弘達(38)は彼女の旦那とは会ったことがあり、印象は少し気弱っぽい好青年だった。優しそうな旦那で良かったと上司として思ったのに…
「なあ神戸さん…何かあるなら話してくれないか?」
 彼は結婚12年目の妻、優子と小学校3年生の長女、保育園年長児の次女を持つパパ。家族想いな彼にとって部下が悩んでいるのは家族が悩んでいるのも同じこと。上司でも介入すべきではないと思っていたが、ここは聞いておくべきだと思い切って尋ねる。
「本当に何でもないですから…」
「嘘だろ?目を見ればわかるんだよ。君が結婚してからだったけど、毎日元気ないし…それにお客さんとも顔を合わせたがらない…」
「……」
 彼は気付いている。何故厚手のジャンパーを羽織っているのかはおそらく栄養が足りていなくて体温が低くなっている。それに服の下は傷だらけだろう。答えられない彼女の身体はブルブルと震えだした。
「大丈夫か…?」
「すいません…」
 結局この日は昼前で早上がりした。ずっとこの調子なら仕事など続けられないだろう。

 弘達の予想通り、真美が家に帰れば団欒とはほど遠い地獄の場所だ。
「ただい…」
 ガシャーン!
「おいテメェ!ピザ買ってきたんだろうなぁ!?」
「さっきあなた…マックのハンバーガーが食べたい…」
「気ぃ変わってピザの気分なんだよ!」
「そんな急に言われたって…」
 ドスッ!
「やめて…!痛ぃ…!」
 彼女に暴力を振るう男は旦那の神戸卓郎(25)。数ヶ月前まで倉庫作業員をしていたが、商品を破損させたにも関わらずに一切謝罪せず、逆ギレして納品するはずの商品を故意に破損させて解雇された。それ以降は妻に寄生し、無茶な要求をしては暴力を振るうなどもはや救いようのない典型的なダメ男と化す。
「いやぁ…!熱い…熱い…!」
 男は彼女の背中に何の躊躇もなく熱湯をかけている!身体中あざと火傷だらけで死んでもおかしくないほどの重傷。元々52kgあった体重は39kgにまで激減し、身長163cmでこの体重は痩せすぎどころではない。男は弱り果てた彼女を見ても何も感じない。さらに
「やめて…おねが…」
 ガン…!
 何と頭部に空のビール瓶で殴りつける!幸いまだ息しているが、彼女の意識は風前の灯火。
「汚ねぇな…掃除しとけよクソ女が!」
「うぅ…(私って何のために生きているの?)」
 結婚する前は優しい人だったのに…どこで私は人生を間違ってしまったのだろう…?
 彼女で鬱憤を晴らした旦那はかなり酔っ払っているのか満足したようにすぐ爆睡した。
 そして彼女は、気付いたらマンションの屋上に立って身を投げようとしていた…結婚を喜んでくれた上司には申し訳ないけど、もう耐えられそうにない…来世こそ良い出会いがあることを信じよう。
「………」
 ガシッ!
「…!?誰?」
「酷く追い込まれているようね?神戸真美さん…」
 彼女の身投げを止めたのは50代前後の女性。何故彼女の名前を知っている?
「私の名前は奥野明美(50)。よかったらあなたにとって人生の壁を越えさせてあげようかしら?」
「どういう…」
「簡単に言えば、不要物処理よ」
 笑顔で語っているが目の奥に見えるのはドス黒い何か。彼女から感じられるのは安心感と何故かわからない恐怖感。
「ねぇ、この際私を信じてみない?決して悪いようにはしないから」
 真美は一瞬悩んだが、このまま何もしないのは死を待つしかない。
「はい…」
「決まりね。ちょっと場所移そっか」

 翌日の23時過ぎ。
 ウーウーウー!
 東京都内のマンションで殺人事件が起きた。殺された被害者は神戸卓郎25歳。
「ウッ…!」
 手足の爪は全て剥ぎ取られ、さらに両目までくり抜かれている。直接的な死因は頸動脈を掻っ切られたことによるものだった。警察官ですら目を伏せたくなる状況、明確な殺意を持って殺害したのは言うまでもない。被害者には結婚したばかりの妻がいるが現在行方はわかっておらず、加害者である可能性はあるかもしれないが証拠は一切ない。
「でも酷いやり方だ…」
「あぁ…俺も長年警官やってるが、こんなのは見たことない…」
「殺されて当然…じゃないですか?」
 殺されて当然だと?今そう言ったのは誰だ?
「おい…悪魔が来たぞ…」
「しっ…!あまり言うな…!」
 後ろから何の気配もなく現れたのは若手の刑事である水瀬幸人(28)。元公安警察の経歴を持つ男だが、本性はかなりのサイコパスで感情といったものがまるでない。加えて超メンヘラでキレたら何をされるかわかったものではなく、高校時代には当時交際していた女子生徒が少し疑わしい行動をしただけで監禁したという噂が流れている。
「水瀬君…殺されて当然とはどういうことかね…?」
 恐る恐る尋ねたのは上司で警部補の坂本逸郎(52)。
「知らないんですか?この男…奥さんを奴隷のように扱ってたクズ野郎ですよ。それにコイツは、16の頃に避妊に失敗して同級生を妊娠させた男でもあります」
 彼の持つ情報収集力は群を抜いており、被害者に関する情報はほぼ全て手に入れていた。
「確かに殺された被害者は無念かもしれませんが、予め前科などは頭に入れておいた方がいいです」
 本人は挑発しているつもりがなくても周りから見れば上司を挑発しているようにしか見えない。ああは見えても彼が持つ信念は本物で、犯人逮捕への執念は燃やしているが、同時に被害者に対する感情は「殺されて当然」であること。要するに葛藤を持っている。それと彼にはどうしても犯人に辿り着かなければならない理由があった。
「ちょっと水瀬君…?」
「先戻ってます…」
 彼はサイコパスに加えて非常に気分屋だ。一体先に戻るとは何か飽きたことでもあったのか?どんな質問でも普通に問い掛けることができるのは上司の坂本のみで他の者は怖くて聞けたものではない。そのためどうしても知りたいことがあると坂本を通じて情報を得るほどだ。謎だらけの水瀬幸人だからこそプロフィールなどを知りたい者も多くいる。
「待っていろ…」
「…?」
 非常に小さい声で放った独り言は怒りが感じられる雰囲気だ。果たして水瀬幸人の目的は何なのだろうか?そして感情が一切感じられない理由。彼が最後に辿り着く「答え」とは一体…?

 一方真美が飛び降りようとした直後。2人は近くの喫茶店へ場所を移していた。それぞれブレンドコーヒーをオーダーする。
「不要物処理って何するんですか?」
 あらかた想像はできるがやはり具体的な内容を聞いておきたい。
「その前に確認するけど、引き返すなら今の内よ?もし私のもとに来る場合なら、死ぬまで足枷を負うことになるわ…」
 場所を移す前に確認を取ったのに再度また確認を取られるとは余程のことだ。それに今目の前にいる奥野明美に関して思い出したことは、彼女は普段占い師をしていて雑誌でも度々見たことある顔だった。
「確か奥野さんの占いは当たる(95%)で有名ですよね?もう引き返さないですよ」
「わかったわ…知ってると思うけど、私は占い師よ。けど私の裏の顔はあんたの旦那のようなクズを殺す執行人よ」
「執行人…あなた一人でですか?」
「リーダーは私だけどあなたと同じように悩んでた女性も執行人として動いているわ」
 ということは自分も執行人の一人になるのだろうか?つまり自分と同じように旦那からのDVに悩みに悩んだ結果なんだろう。そして彼女自身この先どうなっても構わないからとにかくこの状況を打破したい。
「じゃあ本当に…私の旦那を殺ってくれるんですか?」
「あなたが望むなら私が殺るわ。一緒に殺るってなら別だけどね」
 確かに奥野明美に旦那殺害を任せておいた方が安全安心だ。だが毎日毎日死んでもおかしくない暴力を振るわれ、仕事もせず給料を搾取され続けた彼女は自分で手を下さなければもう気が済まなくなっていた。
「私にも殺らせてください…」
「望むなら構わないわ…けど、あなたも正真正銘の執行人になるわよ?」
「私は旦那のことがどうしても許せないんです…!」
「そうと決まれば早速計画を立てるわ。それにあなたが人殺しをした事実は世に出ないようにうまくやるから」
「どんな計画ですか?」
「変わり果てた姿を見れば、この世のものとは思えないほどの光景になる殺り方よ…」

 ゴクゴク…!カシャン…!
「ウッぷ…!」
 18時を回っているのにどうして帰ってこないんだ…?こっちは腹が減って死にそうなのにアイツは…!
 神戸卓郎は仕事をクビになって以来職をまともに探す気もなく、元々アルコールと競馬にハマっていて最終的に沼にもハマっていた。奴にとって妻の真美は暴力を振るっても殴り返さない、口答えを一切しない理想の女。自分が仕事をしなくてもアイツから搾取すればいい。なんて考えていた。それよりも遅すぎる…!
 ガシャーン!
 すぐにでも真美を殴らなければどうにかなっちまいそうだ…!マジで覚悟しとけよお前…!!
「覚悟するのはアンタよ…」
「…!?誰だ?」
 今の声は一体誰だ?しかし周りを見渡しても誰もいない。酒飲みすぎて幻聴がふっと聞こえてきたのだろうか?
「気のせいか…」
 すると
「ムッ…!?」
 突然後ろから物凄い力で口を塞がれる!必死で抵抗しても力が強すぎて引き剥がすどころか、掴んでいる腕は女性なのか非常に細い。息ができなくなった卓郎は抵抗虚しく意識を手放した。

「ムゥ゙…!?ムゥ…!」
「起きたわね?」
 ガムテープで口を塞いでいるのにかなり酒臭い。
 ビリッ…
「おいテメェ誰だコラ!?これは監禁だろ!」
 ドスッ!
「グボォ…!?」
「うるさいお口…流石暴力男の舌は妙に回るわね?」
「テメ…!」
 女に拘束された上に腹を思い切り殴られた卓郎のプライドはズタズタにされそうだ。
「叫んでも無駄よ。やたら高いマンションに住んでることが仇になったわね?」
 手足はガッチリ固定されていてビクともしない。この女は一体何者なんだ。50代に見える外見からは想像もつかないほどとにかく力が強すぎる。男の卓郎が抵抗しても無駄だった。
「さあどうぞ…」
「俺をどうする気だ?」
「さぁ?それはこの人次第ね…」
「お前…真美!?」
 拘束された卓郎の前に現れたのは傷だらけの身体をジャンパーで隠す妻の真美だった。いつもなら生気など感じられない様子なのに今日は何故か表情がハッキリしている。
「テメェどういうつもりだ!?こんなことしてタダで済むと思ってんの、ガァ…!?」
 彼女がお見舞いしたのは左胸に落とすストンプ!それに真美が履いているブーツは私物じゃない。鉄でも入っているのか一踏みが非常に重い。
「カヵ…!」
 仰向けに拘束されていて声が思うように出せない。いつもなら暴力を振るっても一切抵抗しない彼女が鬼のように冷たい目で自分の胸を踏みつけた。卓郎は恐怖を感じたのか涙目になる。抵抗する気力を失い続ける卓郎に見せたのはホームセンターなどに売っている何の変哲もないペンチ。
「万が一声が漏れても困るから塞いでおくわね」
「ありがとうございます…」
 明美は慣れた手つきで卓郎の口を何重にもガムテープで塞ぐ。これから行うことは即ち
 ブチッ…!
「カァーー…!!」
 まずは右手の爪を一つずつペンチで引き剥がす。やり慣れていないのがまたタチが悪く、不器用で爪だけじゃなく肉の一部まで引き剥がされる痛みに涙が止まらない。彼女は冷たい視線を送りながら両手の爪を全て引き剥がすと、そのまま流れ作業のように両足の爪まで剥ぎ取った。
 ガシャ…ガシャ…!
 痛みで必死に身体を動かすが拘束具は一切緩まらない。
「そういえばこの男はお酒が好きと言ってたわよね?ならあれがいいんじゃない?」
「そうですね…」
 明美が取り出したのはアイスピック。このアイスピックは家に置いてあった私物で、卓郎から「炭酸割り作れ」と言われた際に使用したが「氷多すぎて炭酸抜けてんだよ!」と怒鳴られて太腿を刺されたことがあった。最後は自分が妻にしたように同じ道具で拷問される。この絶望感は筆舌にしがたいだろう。
「何か言いたそうね?」
 明美は卓郎の口を塞ぐガムテープを無理矢理剥がした。
「悪かった…!今までのことは全部謝るから…!!お前を殴ったことに関しても自首する!だから助けてくれ…真美!」
「どうするの?」
 彼女は瞳孔を開いたまま顔面を至近距離に詰める。
「そうね…私だってあなたを愛してたわ…けど、私がこの手で殺して死体になったあなたのことなら、もっとあなたを愛せるかもねぇ…?ハハハハ…!ハハハハ…!」
「お前…ホントに、どうしちまったんだ…?」
「もう私なんて見ないでいいわ…」
 再び口を塞いでアイスピックを眼球へ突き刺す!
 ブスッ…!
「アァァァァーー…!!」
 もはや神戸真美は人間じゃない…ただ目の前にいる怨敵を狩る獣だ。
「死ね…!」
 ザシュ…!
 そして彼女は容赦なく卓郎の首を包丁で掻っ切った!頸動脈はスパっと切れて即死だった。1時間以上爪を剥がす拷問に加え、さらに愛用していたアイスピックで両眼球を抉り取られる。普通の人間ならまずできない凶行を彼女はやってしまった…両手についた血痕を眺める彼女に明美は
「付いてきなさい…」
「…はい…」
 微笑みの後に続く返答。彼女が執行人になるまでの時間はかなり早いものだった。愛してる愛してないに関わらず本来人を殺したり、傷つけてはならない。どんなに優しい人でも理性が壊れるまでのリミットは存在する。そのリミットを超えるかどうかは、周りの環境次第で変わってしまうのだ…

 卓郎殺害から2日後の15時過ぎ。
「ちょっと水瀬君…!どこ行くんかね?」
「どうして僕の野暮用に付いてくるんです?」
「急に会議抜け出したら上司が本来止めなきゃいけないからだよ…けどそんなに急いでどうしたんだよ?」
 幸人は急に会議から抜け出して早歩きでどこかへと向かっている。彼を後ろから追ってきたのは坂本だ。気分屋であっても大事な会議の途中でどこか行くのはしたくてもまずできない。今回殺害された神戸卓郎に関しての会議だったのだが、彼は皆より先に情報を掴んでいた。会議の内容が自分が持つ情報の範囲より知れるものがあればと期待していたが、思ったよりなくてすっぽかしたのだ。それと彼には目的がある。
「なあどこまで行くんだ?」
「被害者が金を盗んだマフィアのヤサですよ…」
「な…何だって…!?」
「あっ!坂本さん!やっと見付けました…」
 結局彼のことが気になったのは坂本だけじゃなくもう一人追ってきた刑事がいた。彼の名は山口真悠斗(33)。全力疾走して辿り着いたようだ。
「山口さんも来たんですか…?」
「だって気になるだろ?君の行動はいつも突発的すぎんだよ…それよりどこへ?」
「マフィアのヤサ…みたいだよ」
「はぁぁ…!?」
 3人が勤務する警視庁葉琉州警察署から実に5km以上の距離を歩いている。そして遂に
「ここがなのか?」
「はい…」
「けど逮捕状も何もないぞ?何をするんだ?」
「見るか見ないかは任せます」
 坂本や山口が彼を追っていなければ一人でマフィアのヤサに飛び込むことになる。しかし彼は元公安警察だ。マフィアなど脅威ではないのだろうか?
 キィィ…バタンッ…
「何か用か?サツの連中か!?」
 建物の中には厳つい青龍刀やメイスなどを持って外に出る寸前だったマフィアが数名。この圧には流石の坂本と山口もビビる。
「あんたたちから神戸卓郎という男が金を盗みましたか?」
「知ってんのか?何…お前が盗んだ金でも払うのか!?」
「僕が…?フフ…あなたたちのような人間にどうして僕が…無駄金を払うのですか?」
「何だと…?なら俺たちをとっ捕まえようってか!」
「その前にあんたが出ようったって無駄ですよ?神戸卓郎は昨日死んでいますから」
「何…!?」
 やはりというか前日のことは把握していなかったか。まさしく神戸卓郎本人を捕まえて搾り取るか、身体そのものをコレクションにしようとしていたのだろう。しかしマフィアから金を奪い取ろうとは…余程の金欲しさだったのだろう。
「あんたの目的は神戸卓郎だけじゃありませんね?今僕からこの話を聞いて、奥さんの神戸真美さんを拐おうって魂胆じゃないんですか?」
「クソッ…!ここまでバレちまってんなら仕方ねぇ…おい!」
 カンカン!
 マフィアの一人が青龍刀を床に叩いてカンカン!と鳴らす。すると
 コツコツコツ!
 ざっと数えて15人…いくら相手が刑事でもマフィアにとって怖くなど何ともない。
「マジかよ…水瀬君…!」
「下がっててください…」
「やれぇ!」

 海外マフィア
 15人のマフィアが彼に襲い掛かる!しかし彼は非常に冷静な表情で眉一つ動かしていない。すると電気が点いている蛍光灯に目掛けてコインを飛ばし、命中した蛍光灯はバリーンと割れる。すると微量だが破片が落下し、それに動揺したマフィアは錯乱する。気付いたら至近距離に迫っていた彼による一方的な攻撃だ。
 バキッ…!
 彼は何と一切躊躇もなく一人の首を180度捻り曲げてしまう!当然首を折られれば即死だ。容赦のない彼の姿を見た山口はこの世のものとは思えない光景を見るかのように瞬きすら忘れている。しかしマフィアにとってはたかが一人殺られたくらいだ。どんな鋭利な武器でも水瀬幸人にとってお遊びにしか過ぎず、あっという間に残りの13人は首を逆方向に折られ、最後に残った一人は青龍刀を奪われて両手足を切り落とされた。
「坂本さん…あの人は何者なんですか…?」
「彼は、親の愛に人の愛など知らない…いや知ることができなかった元公安、それが水瀬幸人なんだ…」
 神戸卓郎の死により、妻の真美を拐ってコレクションにしようとした海外マフィア。水瀬幸人によって未遂に終わったが、何故彼はここまで躊躇もなく人の命を奪えるのだろうか?彼の本当の目的。それは大切な人と会うことにあった。果たしてそれは誰なのだろうか?
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