魔力が消える前に、隣国の皇帝と期限付きの婚約を交わす
11.制裁
国王イグナシオは、ランスロットを前に流れ落ちる汗を拭った。執事のような格好をしているが、皇帝のアルフォンスに違いない。
「申し訳ございませんでした。」
「知らなかったのか?」
「……はい。」
「今は俺の婚約者だ。」
「はい。存じ上げております。」
向かってくる魔力が痛い。早くこの場を逃れたい。そんなことを考えながらイグナシオはただ頭を下げていた。
「王太子はどこにいる?」
「それは……」
「わざわざ両親に手紙を書かせて、本人が出て来ないとは。」
「申し訳ございません。」
「王太子のところへ案内しろ。」
「なっ、何をなさるおつもりですか!?」
「俺の婚約者に手を出そうとしておいて、ただで済むと思うのか?」
「……!」
アルフォンスの視線は氷のように冷たい。イグナシオは目を逸らすことができず脂汗を流して固まった。ステファンはどんな目に合ってしまうのだろうか。全力で断りたいが断れない。
「安心しろ。殺しはしない。」
イグナシオは狼狽えながらもランスロットの格好をしたアルフォンスを引き連れて部屋を出た。部屋の前にはジーベルトが控えていた。
「ジーベルト、ステファンの居場所はわかるか?」
「中庭におられるのではないかと。」
「わかった。」
ジーベルトは手を握りしめて、ランスロットの背中に声をかけた。
「あ、あの!私もご一緒してよろしいでしょうか。」
ランスロットは一瞬宙を見上げる素振りを見せてから、にっこりと微笑んだ。
「構いませんよ。」
廊下の角を曲がった瞬間、ランスロットは皇帝アルフォンスに姿を変えた。
(やはり皇帝陛下だ……!)
ジーベルトは息を殺して後をついて行った。
「申し訳ございませんでした。」
「知らなかったのか?」
「……はい。」
「今は俺の婚約者だ。」
「はい。存じ上げております。」
向かってくる魔力が痛い。早くこの場を逃れたい。そんなことを考えながらイグナシオはただ頭を下げていた。
「王太子はどこにいる?」
「それは……」
「わざわざ両親に手紙を書かせて、本人が出て来ないとは。」
「申し訳ございません。」
「王太子のところへ案内しろ。」
「なっ、何をなさるおつもりですか!?」
「俺の婚約者に手を出そうとしておいて、ただで済むと思うのか?」
「……!」
アルフォンスの視線は氷のように冷たい。イグナシオは目を逸らすことができず脂汗を流して固まった。ステファンはどんな目に合ってしまうのだろうか。全力で断りたいが断れない。
「安心しろ。殺しはしない。」
イグナシオは狼狽えながらもランスロットの格好をしたアルフォンスを引き連れて部屋を出た。部屋の前にはジーベルトが控えていた。
「ジーベルト、ステファンの居場所はわかるか?」
「中庭におられるのではないかと。」
「わかった。」
ジーベルトは手を握りしめて、ランスロットの背中に声をかけた。
「あ、あの!私もご一緒してよろしいでしょうか。」
ランスロットは一瞬宙を見上げる素振りを見せてから、にっこりと微笑んだ。
「構いませんよ。」
廊下の角を曲がった瞬間、ランスロットは皇帝アルフォンスに姿を変えた。
(やはり皇帝陛下だ……!)
ジーベルトは息を殺して後をついて行った。