魔力が消える前に、隣国の皇帝と期限付きの婚約を交わす

33.精霊の覚悟

 レオニードは小さなベッドで体を起こした。疲れているけれど、ドルレアンで何もせずにうずくまっていた時と比べたら、ずっと生きていると実感できる。

「動けるか?」
「あぁ。ルシアのところへ連れて行ってくれ。」

「ルシアを元に戻せるかはお前にかかっている。期待している、レオニード。」
「う、うん……」

 冷たくて厳しいことばかり言う皇帝陛下に期待されるとは思わなかった。レオニードは顔がニヤけそうになるのを堪えて顔を俯けた。しかし──

「どうして閉じ込めるんだよ!」

 レオニードは、城へ来た時のように水晶玉の中に閉じ込められてしまった。

「まだ完全に回復していないだろう。体力を温存しておけ。」

 レオニードは反抗せずに横になった。休んでいた方が良いことは確かだ。

(でもなんかな……セレーヌ様に対するバリア的な意味じゃないの?これ。)

 レオニードがわずかな違和感を感じている時、ランスロットはアルフォンスを怪訝な目で見つめていた。

(あれは、レオニードがセレーヌ様と接触しないようにするためのバリアだ。レオニードは精霊で、しかもルシアの恋人。セレーヌ様とどうこうなるわけでもないのに……あぁ、怖い。)

「いってらっしゃいませ~!」

 ランスロットは何事もなかったかのように笑顔を作ると、垂直に頭を下げてアルフォンスを見送った。
< 90 / 100 >

この作品をシェア

pagetop