魔力が消える前に、隣国の皇帝と期限付きの婚約を交わす

34.美男子の側近

 目を開けると、空から金色の粉が降り注いでいた。まるでドルレアンにいたときのような暖かくて幸せな空気に包まれている。

「綺麗……」
「そうだな。」

 思わずつぶやくと、近くで皇帝陛下の声がした。見上げると皇帝陛下も空を見ていた。しかし──

(この状況は……!?)

 私の体は皇帝陛下のマントにすっぽり覆われていた。状況を理解しようとすればするほど、体が熱くなってくる。

「ルシア!待ってろよ!今助けてやるからな!」

 声のする方を見ると、レオニードが透明な囲いのようなものを壊そうと、体当たりを繰り返していた。

「感謝しろ、レオニード。俺がルシアを封印していたおかげで、お前は悪の精霊に触れずに済んだのだからな。」

 よく見ると、透明な囲いの中に美しい精霊ルシアの姿がある。皇帝陛下が指を鳴らすと、透明な囲いが消えた。

「ルシア!ごめん!もう1人にはしないから!」

 抱き合うルシアとレオニードを見て、じんと胸が熱くなる。すると隣から盛大なため息が聞こえてきた。

「こんなことは二度とごめんだ。」
「大変でしたね、陛下。」

「ありがとう、セレーヌ。」

 皇帝陛下はこちらに体を向けてそっと私の頰に手を添えた。動揺して瞬きを繰り返す私の目に映ったのは、妖艶に微笑む皇帝陛下──の背後から駆けてくる異次元の美男子だった。
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