妻、猫になり逃走中! 至急確保し溺愛せよ!

10.脱走の失敗

バルコニーのガラス扉を微かに叩く音がする。私は濃紺のカーテンをそっと開けた。

カーテンを開けた先にいたのは、月明かりに照らされた白い騎士服を着た若い青年。ルビーのように光り輝く赤い瞳が、私を心配そうに見ている。

私はゆっくりと音を立てないようにガラス扉を開いた。

「フェリクス、どうしてここに」

皇太子の寝室のバルコニーによじ登るなど、許されるのは猫だけ。
私の問いかけにフェリクスは一瞬顔を顰めた。
 
「ビルゲッタ、お前を攫いに来た」

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