妻、猫になり逃走中! 至急確保し溺愛せよ!

2.猫になった朝

メイドのヘルカの声が随分と大きく聞こえる。
勢いで家出してしまったが、皇太子妃が夫の誕生祭に現れないなど許されない。

私は夕食も摂らずに一晩眠ってしまったようだ。
ケネトが気を遣って、父には私を呼びに行かないように言ってくれたのだろう。
泣き腫らした目を見られたら心配されるに決まっている。

そっとシーツから抜け出すと、茶髪のおかっぱ頭に灰色の瞳をしたヘルカと目があった。

「にゃあ、にーにー。(おはよう、ヘルカ)」
「きゃあ、猫。なんでこんな所に! ビルゲッタ様はどこ?」

私が声を掛けても、ヘルカは周囲を見渡して私を探し続けている。
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