妻、猫になり逃走中! 至急確保し溺愛せよ!

5.猫のままでいたいのに!

慌てた私はシーツを体に巻きつけ、部屋の外に出た。こんな姿を誰にも見られる訳にはいかない。十メートルおきに配置される夜間騎士。私は彫像品の影に隠れるようにして、ひっそりと夜の城内の廊下を忍足で歩いていた。

背後から近づく足跡に息を潜める。
「ビルゲッタ様ですよね」

小鳥が囁くような女の声に振り向く。そこには目尻をさげ、長い紐で輝かしい金髪を纏めたアルマがいた。燭台の灯りのみに照らされた彼女はまるで女神のように美しい。今の状況をなんとかしてくれと頼めば、ビビデバビデブーの杖で私を変身させてくれそうだ。

「アルマ⋯⋯様?」
「敬称は結構です。聖女とはいえ、私は平民。貴方様は皇太子妃」

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