妻、猫になり逃走中! 至急確保し溺愛せよ!

8.片思いの限界

「ようやっと、ビルゲッタと離婚できる時が来たな」

聞こえてきたエマヌエル皇帝の声に私は思わず柱の影に隠れる。
キルステンは跪いてエマヌエル皇帝を見上げている。後ろ姿で彼の表情が見えないのが不安。

「ロレーヌ侯爵が納得しないでしょう。まだ、ビルゲッタと離婚する時ではないかと」

キルステンの静かな言葉に、胸が締め付けられる。
(やっぱり、私と離婚したかったんだ)

「今が、離婚を突きつけるチャンスだ。チャンスというのは早過ぎてもいかんが、遅過ぎるのは問題外。ビルゲッタは失踪し公式行事に現れなかった。昨晩、薔薇園のパティオ付近で知己の騎士と熱い抱擁を交わしていたという目撃情報もあるぞ」

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