焦がれ、凍てつく蜜月〜拗らせ御曹司と冷遇された社長令嬢の政略結婚〜

第二十章:焦がれる愛の結末

美咲との清算を終え、陸と奈緒は、両家を説得し、改めて愛に基づいた結婚式を挙げる準備を進めた。当初の政略結婚の体裁は、二人の揺るぎない愛の前に崩れ去り、両親たちも、拗れ続けた二人の幼馴染の愛を祝福した。

一年後。二人は、初めて出会った場所に近い、歴史ある教会で、親しい人々に見守られながら永遠の愛を誓った。陸の瞳は、五年前の冷たさも、一年前の苦悩も消え去り、ただ奈緒への深い愛と幸福に満ちていた。

そして、それからさらに数年の月日が流れた。
西園寺家のセカンドハウスは、もはや「冷たい新居」ではなかった。奈緒の笑い声と、陸の穏やかな視線によって、家全体が温かな光に包まれていた。

陸の溺愛は変わらない。相変わらず奈緒が他の男性と話すだけで露骨に嫉妬するが、奈緒はそのたびに優しく陸の頬にキスをし、「私には、拗らせたあなただけよ」と囁く。陸は、その言葉に、何度でも安堵と喜びを感じるのだった。

ある冬の午後。
奈緒は、陸の書斎に温かい紅茶を運んだ。陸はデスクから顔を上げ、奈緒のふくよかなお腹に優しく触れた。
「無理しなくていい。座っていなさい」
「大丈夫よ。あなたも、仕事を詰め込みすぎないで。もうすぐ、家族が増えるのだから」

奈緒は優しく微笑んだ。政略結婚から始まった二人の愛は、今、新しい命という、揺るぎない絆をもたらそうとしていた。
陸は、奈緒を抱き寄せ、その頬に深く口づけた。

「君を失うことが怖かった日々が、嘘のようだ。僕は、君を愛するという、ただ一つの真実に気づくのに、あまりにも時間がかかりすぎた。この子が生まれても、僕の溺愛が分散されることはない。君への愛は、永遠だ」
奈緒は、陸の腕の中で目を閉じた。

(政略結婚を断固拒否しようとしたあの夜、陸が「断るなんて、絶対させない」と言ってくれて、本当によかった)
あの時、陸が頑なに結婚を強行したのは、奈緒が他の男を愛しているという誤解と、それでも手放したくないという焦がれるような独占欲からだった。

その拗らせた愛が、回り道をしながらも、最終的に二人の心を一つにしたのだ。
陸は、奈緒の手を握り、指輪に口づけた。指輪は、形式のために選ばれた高価な宝石ではなく、二人の愛の軌跡を象徴する、かけがえのない宝物となっていた。

「愛している、奈緒」
「私もよ、陸。ずっと」
拗らせ続けた幼馴染の初恋は、誤解とすれ違いという切ない試練を経て、今、最高の形で結実した。政略結婚は、二人の愛の形を、永遠の蜜月へと昇華させたのだった。

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