ツンデレ当主の生贄花嫁になったら愛されすぎたので私は生贄になりたいんです!

04 ウルム王国

リーゼがケンプテン大公国に到着したのは夜更けだったにもかかわらず、父親であるケンプテン大公と継母である大公妃ベルタが温かく出迎えてくれた。フリッツは隣国に旅に出ているとのことで不在だった。

父親の大公は涙ながらにリーゼを抱きしめた。

「我が娘であり正当な第一公女、リーゼよ。お前の人生を死に追いやろうとした愚かな父をどうか許しておくれ」

「謝らないで、お父様。こうやって私を迎え入れてくださること、心より感謝します」

ベルタも泣きながらリーゼを抱きしめた。

「リーゼ、マルゴットの脅迫に負けて真実を言えずに貴女を苦しめ続けたあたくしを許してくれる?」

「お義母様こそ、私のせいで長い間辛い思いをさせてしまいました。どうかこれからもよろしくお願いいたします」

「ありがとう、リーゼ」

三人は涙を流し合い抱き合った。

また監禁塔に引き続き幽閉されると思っていたリーゼは、監禁塔ではなくはじめて城の中に自分の部屋を与えられ、心からカミルに感謝した。

なぜならちゃんと正当な第一公女としてリーゼを迎え入れなければ、容赦なく攻め込むとカミルが大公と条約を結んでくれていたのだ。カミルはリーゼがまた監禁塔に幽閉されることがないように居場所を作ってくれていた。

どうしてカミルのことを忘れることができるだろう。いや、忘れる必要はない。たとえ報われなくてもカミルのことを好きな気持ちに変わりはない。

持って帰って来たカミルが贈ってくれたウェディングドレスを胸に抱いて、これで最後にするからとリーゼは部屋でひとり思いきり泣いた。

翌朝になると、リーゼは久しぶりに監禁塔を訪れた。
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