ツンデレ当主の生贄花嫁になったら愛されすぎたので私は生贄になりたいんです!

09 それぞれの決戦前夜~リーゼとフリッツ~

ケンプテン大公国の自分の部屋で、リーゼはヴェンデルガルトから貰った本と向き合っていた。

カミルのためにどうしたらドラゴンの片鱗を手に入れることができるのか? どうしても知りたい。

目の前であんなにもひどく吐血したカミルを見た時、もう長くはもたないと確信した。カミルの命を傷付けてしまったのは自分だ。嵐の夜に忠告を聞かず勝手な行動をしてしまったから。なんとしてでもドラゴンの片鱗だけは手に入れて薬を完成させなければ。

ドラゴンの片鱗について父親の大公やフリッツをはじめ、家臣や召使など会う人すべての人に聞いてみたが誰も知らなかった。まだ本は半分以上解読できていない。寝るのを惜しんで本を読み続けているリーゼを心配してフリッツがやってきた。

「またその本を読んでるの? もう夜中の12時だよ」

「でも一日も早く、私のために犠牲になってくれたカミル様を治す薬を完成させたいの」

「わかってるよ。あの嵐の夜、カミル様が皆の反対を押し切って君を探しに行った時のことは僕も知ってるから。その恩に報いたいと思う君を誇りに思うよ」

「ありがとう、フリッツ」

「でも昨日からまったく寝てないだろ? 顔色が悪いよ」

「本の続きが気になってしまって眠れないの」

「今日は少しでも寝た方がいいよ。ほら、珍しいお酒を持ってきたんだ」

「お酒?」

「少し変わった味がするかもしれないけれど、これを飲めば短い時間でもぐっすり眠れるよ」

フリッツはグラスに酒を注ぐとリーゼに渡した。

「一口で十分だから。飲んでみて」

「うん」

フリッツが見守る中、リーゼはグラスに口をつけて一口分の酒を口に含んだ。
< 123 / 142 >

この作品をシェア

pagetop