ツンデレ当主の生贄花嫁になったら愛されすぎたので私は生贄になりたいんです!

03 生贄花嫁の儀式Ⅲ

追い詰められるイルメラを一睨みしたベルタが小さな声で「だから始末しろと言ったのに」と呟いたのを、カミルは聞き逃さなかった。

木こりと大男が騎士団に連行されてその場からいなくなると、ベルタはドラゴンに泣きながら憐れみを請うように嘆いた。

「ああどうかドラゴン様、哀れな娘を許してやってください。いつも娘は人知れずリーゼに虐められていたのです。それなのに表面上は弱弱しく振舞うリーゼの本性に誰も気が付かない。それどころか、男には媚びるリーゼにフリッツもカミルまで騙されてしまった。娘の無念さを考えると、それしか方法がなかったのです」

「うーむ。それは何とも言えぬな」

ドラゴンはどちらが正しいことを言っているのか判断できかねるようだった。

「……どうして……どうしてそんな嘘がつけるの……?」

ベルタの嘘を目の当たりにしたリーゼは、その狡猾(こうかつ)さに反論できず怖ろしさを覚えた。するとベルタはカミルを睨んで言った。

「それに、先ほどからまるであたくしが大公妃を殺しリーゼをブラックオパールの瞳にしたような言い草は、到底許すことができません。今すぐドラゴン様に訂正してくださいな」

「事実だろ? 訂正はしない」

「カミル7世! 侮辱にも程がある! そこまで言うなら証拠を見せてごらんなさいな! 見せれるものならね!」

「証拠ならある!」

それはカミルの声ではなかった。

「お父様!」

リーゼとイルメラが同時に叫ぶ。

その声は、大勢の家臣と騎士団を引き連れて湖畔にやって来ていたケンプテン大公だった。

「あなた! どうしてここに!?」

驚くベルタに大公は厳しい視線を送る。
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