ツンデレ当主の生贄花嫁になったら愛されすぎたので私は生贄になりたいんです!

04 黄金の馬車の中で

城の外に出ると大人数の騎士団が整列してリーゼ達を待っていた。

黄金の馬車も停まっている。

リーゼがその豪華さに驚いていると、執事が大公がカミルと二人で話がしたいとのことで呼びに来た。

カミルに待っているよう言われたリーゼが馬車の前で待っていると、名前を呼ぶ声が聞こえた。

「フリッツ!」

リーゼの名を呼び走って来たのはフリッツだった。

「リーゼ……どうしてこんなことに。僕にはどうしても君が生贄花嫁になるなんて耐えられない。みんなどうかしているよ、生贄花嫁だなんて。この狼筋の男だって僕が殺してやりたいくらいだ」

憤慨しているフリッツをリーゼは宥めた。

「いいのよ、フリッツ。呪われし子の私がみんなの役に立って死んでいけるなら本望よ」

「リーゼ……君って子は……」

「フリッツ、今までやさしくしてくれてありがとう。どうか元気でね」

堪らなくなったフリッツがリーゼをハグしようとした時、先にリーゼはうしろから抱きしめられた。

それは大公との話が終わって戻って来たカミルだった。

「俺の花嫁に触るな」

カミルがフリッツに無表情で言う。

「俺の花嫁だと? よく言うよ、生贄にしようとしているくせに」

無表情のカミルと今にも飛び掛かりそうなフリッツはしばし対峙した。

しかし馭者が黄金の馬車の扉を開けにきたのでカミルは無言でリーゼを先に乗せ、フリッツを一瞥してから自分も乗り込んだ。

動き出した馬車の窓からリーゼは身体を乗り出して手を振った。

フリッツも馬車が見えなくなるまで手を振り続けた。
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