ツンデレ当主の生贄花嫁になったら愛されすぎたので私は生贄になりたいんです!
エピローグ

二つの虹

よく晴れた青空が広がる爽やかな日。

色とりどりのガーランドや花々で装飾されたカミルの城のバルコニー前の広場には、たくさんの獣筋の貴族たちをはじめ森の住人や動物たちが集まっていた。

リーゼは控室の鏡の前でラーラに手伝ってもらいながらウェディングドレスを着ていた。

「リーゼ様は本当にカミル様に愛されていますね。このウェディングドレス、最高級品ですよ」

前に贈ってもらったウェディングドレスは生贄の儀式の夜にぼろぼろになってしまったから、カミルが新しいドレスを用意してくれた。

「私には勿体ないわね」

「そんなことないです。普段はクールな感じのカミル様がリーゼ様と一緒にいる時は好きが溢れてて、見ている私までキュンキュンしちゃいます」

「ラーラったら」

リーゼがラーラを(たしな)めていると正装したカミルが入って来た。

カミルはウェディングドレス姿のリーゼを見て微笑むと歩み寄り、腰に手を回して抱きしめた。

「気に入った?」

「はい、とっても」

「良く似合ってる。綺麗だ……」

ラーラはリーゼに「ほらね」と言わんばかりに目配せして部屋から出ていった。

もうリーゼの左目のブラックオパールの瞳に包帯は巻かれていない。

あの生贄花嫁のウェディングドレスを着た日。そのドレスがカミルの血で染まったあの日。こんなに幸せな日がくるとは夢にも思ってみなかった。

「やっとこの日が来たな。今日、お前は俺の本当の花嫁だ」

「はい!」

見つめ合い二人がキスしようとするとドアが勢いよく開いた。

「あれ、邪魔しちゃった?」

「えっ! なになになに?」

リーゼ達をからかっているのは礼装したザシャとフリッツだった。
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