ツンデレ当主の生贄花嫁になったら愛されすぎたので私は生贄になりたいんです!

06 ヴォルフ家の一族

そのあとリーゼは夕食会のためにカミルが用意してくれたドレスに着替えた。

自分で作った木綿や麻の粗末な生地の地味なドレスではない。

カミルの瞳のような爽やかなブルーの光沢のあるシルク生地に白いリボンが沢山ついているビスチェタイプのロングドレスだ。

大きな鏡の前でウエストの大きなリボンをラーラが結び終わった頃、カミルが部屋に入ってきた。

気を利かせたラーラが退出すると、リーゼの後ろに立ったカミルは鏡越しにリーゼを見つめて言った。

「綺麗だ」

「綺麗? 私が?」

「ああ」

カミルはうしろからリーゼを抱きしめた。

ビスチェの露わになった両肩が少し震えたのに二人とも気付いたが、カミルは気付かないフリをしたまま左肩にキスをした。

「ドレス、気に入った?」

「は、はい」

「よかった」

「あ、あの……私、生贄花嫁ですよね?」

「うん」

「それならこんなに高価なドレスを用意してくれたり、専属のメイドさんまでつけたりしてくれなくても全然大丈夫です。私、監禁塔で質素な生活には慣れてるので。だからこういう本当の花嫁みたいな扱いは……」

「嫌?」

「い、嫌とかじゃないけれど、なんか緊張します」

「俺も」

「えっ?」

いえいえ、いつもとっても余裕そうに見えるんですけど……。

カミルは胸ポケットから大粒のダイヤモンドのネックレスを取り出すとリーゼの首につけた。

リーゼのデコルテでダイヤモンドが美しく光り輝く。

「私には、勿体ないです」

「お前がそう思っても、俺はそう思わない」

なぜこの人はこんなにもこちらが気恥ずかしくなるようなことばかり言ってくるのだろう?

ただの生贄花嫁なのに。

「左目の包帯は、取らないの?」

リーゼの耳元でカミルが囁いた。
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