ツンデレ当主の生贄花嫁になったら愛されすぎたので私は生贄になりたいんです!
第2章
01 カミルの追想
ザシャと居室に戻ったカミルは2つのワイングラスに赤ワインを注いだ。
「ごめん、邪魔するつもりはなかったんだ」
ザシャが両手を合わせて申し訳なさそうに謝る。
「結果的に邪魔だったがな」
「だって、気になって。ずっと探し続けていた念願の女性にやっと出会えたんだから。やはり彼女で間違いないか?」
カミルは調度品のチェストの引き出しから陶器製の箱を取り出して蓋を開けた。中に入っているのは女性用のドレスの一部を破ったようなボロボロの布切れだ。
「ああ、間違いない。狼筋の嗅覚は優れている。彼女の香りを間違えることはない」
「やっと巡り会えたな。でも、どうするんだ?」
「どうするって?」
「生贄花嫁の儀式だよ」
「……」
「儀式をやるということは、彼女を失うことになるんだぞ?」
「わかっている。しかし俺には代々黒い森の管理者を務めてきたヴォルフ家の当主としての責務がある。己の命を賭してでも、122年に一度の紅の月の夜の儀式だけは執り行わねばならない」
「カミル……」
「お前が気にすることはないさ」
「これもすべて、カミルの名のせいなのか……」
そう呟いたザシャをカミルが鋭い眼光で制止した。
「いいか、紅の月の夜は来月だ。滞りなく生贄花嫁の儀式を終えれるよう細心の注意を払って準備をしてくれ」
「わかった」
たとえ幼い頃から一緒に育ち兄弟のような存在であっても、ヴォルフ家の当主であるカミルの命令にザシャは背くことはできない。
ザシャが部屋から出ていくと、カミルは残りの赤ワインを一気に飲み干してひとつ息を吐いた。
服を脱ぎ居室に備え付けられたバスルームのバスタブに張られた湯に浸かり、重力から解放され疲れを癒しながら今日一日のことを振り返る。
思い返されるのはリーゼのことばかりだ。
「ごめん、邪魔するつもりはなかったんだ」
ザシャが両手を合わせて申し訳なさそうに謝る。
「結果的に邪魔だったがな」
「だって、気になって。ずっと探し続けていた念願の女性にやっと出会えたんだから。やはり彼女で間違いないか?」
カミルは調度品のチェストの引き出しから陶器製の箱を取り出して蓋を開けた。中に入っているのは女性用のドレスの一部を破ったようなボロボロの布切れだ。
「ああ、間違いない。狼筋の嗅覚は優れている。彼女の香りを間違えることはない」
「やっと巡り会えたな。でも、どうするんだ?」
「どうするって?」
「生贄花嫁の儀式だよ」
「……」
「儀式をやるということは、彼女を失うことになるんだぞ?」
「わかっている。しかし俺には代々黒い森の管理者を務めてきたヴォルフ家の当主としての責務がある。己の命を賭してでも、122年に一度の紅の月の夜の儀式だけは執り行わねばならない」
「カミル……」
「お前が気にすることはないさ」
「これもすべて、カミルの名のせいなのか……」
そう呟いたザシャをカミルが鋭い眼光で制止した。
「いいか、紅の月の夜は来月だ。滞りなく生贄花嫁の儀式を終えれるよう細心の注意を払って準備をしてくれ」
「わかった」
たとえ幼い頃から一緒に育ち兄弟のような存在であっても、ヴォルフ家の当主であるカミルの命令にザシャは背くことはできない。
ザシャが部屋から出ていくと、カミルは残りの赤ワインを一気に飲み干してひとつ息を吐いた。
服を脱ぎ居室に備え付けられたバスルームのバスタブに張られた湯に浸かり、重力から解放され疲れを癒しながら今日一日のことを振り返る。
思い返されるのはリーゼのことばかりだ。