ツンデレ当主の生贄花嫁になったら愛されすぎたので私は生贄になりたいんです!
第3章

01 舞踏会

ある朝。自室にいるリーゼにラーラが朝食と共にリボン掛けされた大きな化粧箱を持ってきた。

「リーゼ様。カミル様から新しいドレスが届いています」

「新しいドレス?」

「今夜の舞踏会用のドレスですよ」

「舞踏会!? そんなこと何も聞いてないけど」

「今夜、お城の大広間で森に棲む獣筋の貴族たちが集まって、舞踏会が開かれるんですよ」

「舞踏会って、まさかダンスとかするんじゃ」

「当り前じゃないですか。舞踏会ですもん」

「それは困るわ。だって私、踊れない」

リーゼは正真正銘生まれは公女だが召使として監禁塔に幽閉されていたため、ダンスや歌など公女として必要なすべての教養を身に付けさせてもらえなかった。

「どうしよう……」

「カミル様と練習なさったらどうです?」

「駄目よ。ダンスも踊れないなんて知られるのが恥ずかしい」

「じゃあ、フリッツ様とか」

「そうね! フリッツなら王子だからダンスももちろん踊れるし、私が踊れないことも知ってるし」

朝食後、早速リーゼはフリッツを誘って城の誰もいない中庭でダンスの練習をした。基本のステップを覚えるので精いっぱいだったが、とりあえず舞踏会には出られそうなくらいにはなった。

「大丈夫だよ。いざとなったら男性にエスコートしてもらえばいいんだから」

「うん」

ダンスの練習を終えリーゼとフリッツは手を取り合ったまま城の中に戻った。

偶然、城の廊下を歩いていたカミルが窓からその様子を見ていたことを知らずに。

夜になると舞踏会が始まった。

リーゼがカミルがプレゼントしてくれたドレスを着て会場の大広間に行くと、招待客と挨拶しているカミルを見つけた。挨拶が終わったタイミングで笑顔でカミルに駆け寄ろうとすると、カミルはリーゼと目が合ったにもかかわらず顔を背けて向こう側へと行ってしまった。

今までならプレゼントしてくれたドレスを着れば必ず似合うとか綺麗とか、嘘でも褒めてくれていたのに。無視されるなんてはじめてだった。それがこんなにもショックを受けることだとは思ってもいなかった。

舞踏会の演奏が始まり、広間にいる大勢の招待客がカップルで踊りはじめた。その中で一際優雅に人々の中心で踊る男女がいる。周りの人々が踊るのをやめて、その二人に見入ってしまうくらいだ。その二人とはカミルとイルメラだった。
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