ツンデレ当主の生贄花嫁になったら愛されすぎたので私は生贄になりたいんです!

07 点と線

カミルとザシャは馬に鞭打って大急ぎで木こりの家から城へと戻り、リーゼの部屋に駆け込んだ。

リーゼはラーラとトランプをして遊んでいたが、カミルがいきなり入ってきて抱きしめたから手に持っていたトランプを全部絨毯の上に落としてしまった。ラーラがふさふさの耳をピンと立てて羨望の眼差しで抱き合う二人を見ている。

「よかった、無事で……」

「カミル様?」

「何もされてないか?」

「ええ。何かあったんですか?」

「いや。無事ならいい」

「そうだ、イルメラとフリッツがケンプテン大公国に帰りました」

「何だと!?」

「カミル様とザシャ様にお世話になったお礼が直接言えなくて、申し訳ないと言ってました」

「そうか……いいか、これからはどんな些細なことでも何かあったら遠慮せずにすぐに俺に言え」

「はい」

カミルはリーゼを見つめて額にキスすると、ザシャと共に部屋を出ていった。城の中の長い廊下を歩いているとザシャがからかうように言ってきた。

「すっかり仲直りしたんだな、リーゼと」

「まあな」

「昨日、あの洞穴で何があったんだ?」

「俺のことを思い出してくれた、やっと」

「なるほど。それでこれまでの積年にわたる募る想いを、これでもかというくらい激しくぶつけたわけだ」

「まあ、そんなところだ」

「リーゼも受け入れてくれたんだな?」

「ああ」

ニヤニヤしているザシャにカミルが淡々と言う。

「キスしただけだ。黒い森の支配者の生贄花嫁に手を出すことはできない」

「そうだった……どうするの? これから」

「俺はもう迷わない。全力でリーゼを護る。もしそれが叶わなければ、その時は俺も……」

「カミル! まさかリーゼと一緒に死ぬ気じゃ……」

心配そうな顔をしているザシャの肩をカミルはポンと叩いた。

「心配するな、ザシャ。それは絶対に回避する」

「僕も全力で協力するから馬鹿なことは考えないで」

「わかってる」
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