ツンデレ当主の生贄花嫁になったら愛されすぎたので私は生贄になりたいんです!

11 降霊会

翌朝。カミルは朝一番で森のはずれのヴェンデルガルトの棲家を訪れた。

寝惚け眼で出てきたヴェンデルガルトに、問答無用で図書室に隠されていた本の中から落ちてきた肖像画を見せる。

「この絵に描かれているのはカミル6世とお前だな?」

「どこにあったんだい?」

「城の図書室に隠されていたカミル2世の本の中に挟んであった」

「122年間誰も見つけられなかったのに?」

「偶然リーゼが見つけたんだ」

「またあの娘か。やはりあの娘は呪われしカミルの名を解放する娘のようだ」

「どうやって解放するんだ?」

「そんなことは知ら……」

ヴェンデルガルトがいつもの天邪鬼な言葉を言おうとすると、カミルは腰の剣のグリップを強く握った。

「俺はリーゼを護るためならなんでもやる。まわりくどい話はやめてもらおう」

ヴェンデルガルトは観念したかように両肩を竦めた。

「カミル6世の恋人だったのか?」

「ああ。婚約していたよ」

「信じられない……」

青ざめて信じられないといった顔をしているカミルを、ヴェンデルガルトはじろりと睨んだ。

「カミルの7代目はモテるかもしれないが、本当に女心がわからない失礼な男だよ。ほら、この肖像画をよーく見てみな。あたしだって若い頃は美人だったんだ」

「カミル6世は生贄花嫁の儀式をしたあと狼筋の貴族の娘と結婚している。なぜ別れたんだ?」

「あたしがあの人を信じられなかったから」

ヴェンデルガルトが遠い目をして話す。

「婚約していたのに風の噂で他の女と結婚する準備をしていると聞いたあたしは、怒って婚約破棄をした。それが生贄花嫁の儀式だと知ったのは儀式当日だった」

「それで湖畔に儀式を見に行ったんだな?」

「あたしが行った時にはすでに、生贄花嫁のブラックオパールの娘はドラゴンに捕まっていたよ。あの人はこの儀式を終わらせるにはどうしたらいいのかとドラゴンに尋ねた」

「ドラゴンはなんて答えたんだ!?」
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