ツンデレ当主の生贄花嫁になったら愛されすぎたので私は生贄になりたいんです!
第4章

01 お払い箱

月齢が朔となり、122年に一度の紅の月の夜の生贄花嫁の儀式まであと2週間となった。

数日前にカミルは突然、ケンプテン大公国のリーゼの父親である大公に話があると言ってザシャを引き連れて旅立った。リーゼも一緒に行きたかったが、生贄花嫁の分際で自分から一緒に行きたいとは言えなかった。

自室でカミルが贈ってくれたウェディングドレスに百合の花の刺繍をしてカミルの帰りを待ちながら過ごしていると、耳を垂らしたラーラが息を弾ませて呼びに来た。

「リーゼ様! 早く食堂に来てください! 皆様がお待ち兼ねです!」

リーゼが食堂に走って行くと、いつの間に帰って来ていたのかカミルとザシャが長テーブルに着席していた。他にもニクラス5世をはじめとするヴォルフ家の一族が勢揃いしている。

その中に一族の者ではないが、煌びやかなドレスを纏いドレスと揃いのつばの広い花飾りのついた帽子を被って座っている女性がいた。顔は帽子のつばで見えない。

リーゼが空いていた一番端の椅子に着席するとカミルが口を開いた。

「これで全員揃ったな。それではご紹介しましょう」

帽子を被った女性が大きな帽子のつばを上げて顔を上げた。

「イルメラ! どうしてここに!?」

顔が見えなかった女性は、フリッツと一緒に大公国に帰ったイルメラだった。リーゼの問いかけにカミルが答える。

「俺が大公国から連れてきたんだ。生贄花嫁の儀式が終わったあとの、俺の本当に結婚する花嫁候補として」

「えっ?」

リーゼはカミルが何を言っているのかわからなかった。わからないのに心にはちゃんと響いていて、心臓が止まりそうだった。本当の花嫁候補ってどういうこと!? 

「またこちらのお城にお招きして頂きありがとうございます。ケンプテン大公国の第一公女、イルメラ・グライスナーです。カミル様の花嫁候補となれてこれ以上光栄なことはありません。どうぞまた、かわいがってくださいね」
< 94 / 142 >

この作品をシェア

pagetop