甘い香りに引き寄せられて ~正体不明の彼は、会社の××でした~

第三話 はじめてのデート



 目を覚ました結香は、頭を鈍器で殴られたかのような鈍い痛みに襲われた。

(いったぁ……何これ、頭が割れそう……っていうかここ、どこ? 私、何してたんだっけ)

 周囲を見渡せば、どこかのホテルのようだ。白とベージュカラーで統一された客室は広々としていて、ラグジュアリーな雰囲気がある。ベッドサイドの液晶時計は、朝の八時過ぎを示していた。

 結香は痛む頭を抑えながら、昨晩の朧げな記憶を手繰り寄せていく。

(確か昨日は、仕事帰りに真宮さんとご飯を食べに行って……そうだ、それでつい飲み過ぎちゃったんだ。それから……あれ、どうしたんだっけ)

 その後の記憶が綺麗さっぱり思い出せない結香は、全身から血の気が引くのを感じた。慌てて自身の身体を確認すれば、着ていたはずのスーツではなく、ホテルのものらしい寝間着を身につけている。
 視線を巡らせれば、仕事用のスーツはハンガーにかけられていた。けれどホテルにきたことすら覚えていない結香が、自身で着替えた記憶があるわけもない。

 結香が思考を巡らせていれば、部屋の扉が開かれた音がした。

「起きたのか」
「……真宮さん」

 昨日着ていたものとは違うネイビーのスーツに身を包んでいる優雅は、顔色の悪い結香に気づくと、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出して手渡してくれる。
 有難く受け取った結香は、乾いた喉を潤してから、今の状況について確認させてもらうことにした。

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