真夜中の償い

惹かれる二人

一方由里はそんなリアムの心情は知らずにこちらもまた、リアムの美しすぎる顔や少し低めのセクシ-な声に魅せられていた。

きっと美のビ-ナスが一番ご機嫌がいいときに自分の理想を形に仕上げたのだろうと密かに思っていた。

今日のリアムは普段着で半袖のVネックの薄手の白いセーターにグレーのコットンパンツと白のジャケットを羽織っていたが、食事を終えるころにはジャケットも脱いで体に沿ったセーター1枚になっている。

鍛え上げた肉体が服の上からでも感じられる胸筋も厚くて袖から覗く腕につく筋肉も動かすたびに目について、由里は目のやり場に困っていた。

昔相馬のスーツを誂えに付き合ったときに店員に教えてもらったのだが、男性のスーツは胸できるそうだ。

胸板が適度に厚いのがスーツをきれいに着こなす秘訣だということだった。

スーツの胸元にあまり隙間がなく胸に沿ってぴったりとおさまっているのが、セクシーだと相馬にも聞いたことがある。

「僕は全然ダメだけどね。そんなふうにかっこよく着こなせている人は僕の周りでは一人しかいないよ」

と言っていた。

きっとリアムの事ではないかと由里は独り言ちた。

そんなリアムは由里の心のうちはつゆとも知らずまぶしそうに眼をすがめて遊ぶ人々を見つめている。

そんな横顔もまた美しいリアムだ。

“由里“と名前を呼ばれるたびにドキドキする心臓の鼓動を聞かれていないだろうかと心配になる由里だった。

昨晩下ごしらえをして今日の午前中に作った渾身のお弁当を、美味しい美味しいと言って完食してくれたのは幸せだった。

お腹がいっぱいになりちょっと眠くなったけれどゆったり座って人々がスポ-ツに興じるのをしばらく眺めていたが、リアムが今日は
ロングアイランドまで行こうと思っているというので、リアムの車で向かうことになった。

マスコミ情報によれば車が好きなリアムは何台も車を所有しているらしい。

今日はドイツ車の白のセダンに乗ってきていた。

普段はマンハッタンでは運転手に任せているらしいが今日は愛車できていてロングアイランドまでのドライブも楽しみだという事だ。

ドライブは気分転換にもいいので大好きだと言う事だ。

車の事や由里の最近の仕事のことなどを話しながら1時間強のドライブは快適だった。

すっかり海を見に行くのだと思っていたがついた所は、海ではなくて緑に囲まれた高級住宅街の一角にあるお屋敷だった。

誰のお屋敷かなあと興味津々の由里にリアムは

「ここが僕の本宅なんだ」

そう言って、ガレージのドアをリモコンで操作して開けた。
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