真夜中の償い

由里の過去

リアムはどうしたらいいかわからないというように俯いて

「ゴメン。今週ずっと由里に会えなくて先週も夜中に黙って帰ってしまうし、もう嫌われたのかと思って…今日のパーテイの同伴も断られたし、由里はやっぱり日本人の男がいいのかと焦ってしまったんだ。ほんとにゴメン」

「ほんとに悪いと思ってる？同伴してくれる人はいっぱいいるみたいじゃない。さっきの女の人モデルのナタリアでしょう？あなたと噂のあった人よね。違う？」

「いや違ってない。いや同伴はしていない。今日は一人で行ったんだ。由里以外の人と行く気にはなれなかったから…彼女はナタリアは僕を追いかけてきただけだよ」

「それにしては仲良く腕なんか組んでたじゃない」

「妬いてくれてるの？うれしい」

「うれしいってどういうことよ」

「だって僕を男として意識してくれてるから嫉妬するんだろ？それならうれしいよ。僕も同じだから由里を誰にも渡したくない。僕だけの由里でいてほしい」

由里は顔を赤らめてまた窓の外を見つめて“何なのそれ？”

と小さく呟いた。

「僕は由里が好きなんだ。愛してるんだ。こんな気持ちになったのは初めてだよ。責任取ってよ」

まるで子供のような言い草のリアムは情けない顔をして、いつもは明るいブルーの瞳がその濃さを増して情熱をたたえて由里をとらえた。

こんなに美しい人に射抜かれるように見つめられて落ちない女なんていない。

もうどうにでもなれって感じの由里だ。

リアムの部屋につくと玄関で靴を脱ぐのももどかしく抱きしめられ口づけされて、二人はリビングのソファーにもつれ込んだ。

リアムは

「由里、由里好きだ。愛してる」

とうわごとのように言い続けて由里を激しく抱いた。

寝室に行けたのは夜中の１時を回っていた。

「今日は帰さないからな」

リアムは逃がさないとばかりに由里をぎゅっと抱きしめて、二人一緒に眠りに落ちていった。

リアムは眠りに落ちる前に、由里の額にやさしくキスを落とすと”モグロー”と言って眠りに落ちていった。

由里は覚悟を決めて朝までいることにした。

さっき裕司に勇気を出せリアムにすべてをゆだねるんだ。

話を聞いた限りリアムは信用できるといった。

ホテルでリアムに連れ去られたとき裕司はサムズアップして頑張れと言ってくれたのだ。

夜明け前のまだ薄明るい夜と朝のはざまで由里は悪夢に苛まれていた。

「ごめんなさい。ごめんなさい。パパ。痛い痛いやめてお願い。そんな事しないで、お願い向こうに行って痛いよう、パパやめて」

それは小さな女の子の泣く声だ。由里の口から発せられる言葉がリアムを凍らせた。

「由里、由里、目を覚ますんだ。夢を見ているんだ。帰ってこい由里」

リアムは必至で由里に呼びかける。

「僕がいる。僕が由里を守るよ。だから目を覚まして」

涙をいっぱいためて由里は目を覚ました。

とうとうリアムに知られてしまった。

きっと軽蔑される。でも仕方がないこれが由里の真実なのだから…

「大丈夫？今水を持ってくるよ」

と言ってリアムがベッドを出ようとした。

「水はいいの。話を聞いてくれる？」

「もちろんだ。でも話したくないなら無理に話さなくてもいいんだよ」

「でも、ユウ兄にいわれたの勇気を持てって、リアムに全部さらけだせって、それでリアムが受け止めきれないならそこまでだって」

「それならきちんと聞くよ。ユウ兄が知っていて僕が知らないのは嫌だからね」