真夜中の償い

ナタリアの妨害

リアムは由里にペンとハウスに引っ越してくるように何度も言ってくれたがなかなか由里は決心できずにいた。

でも、クリスマスにリアムへのプレゼントも用意できずに仕事を入れてしまって、さすがにリアムには申し訳ないと思っていた。

二人の初めてのクリスマスシーズンを気まずい雰囲気で迎えることになってしまった。

でも由里は仕事に誇りを持っている。

由里の会社なのだ。

それを疎かにはできなかった。

イブの夜リアムのペントハウスを訪れるとパーテイのカウントダウンの真っ最中で、リアムはテラスでスタイル抜群の目の覚めるような美女とキスをしていた。

こんな時間に遅れてきた由里が悪いのはわかっているが、リアムが自分以外の美しい女性と抱き合ってキスをしている姿は冷静には見られなかった。

そして自分がすごく浮いていることも自覚した。

みんなおしゃれして容姿も抜群の美女ばかりで男性もタキシードをきっちりと着込みパーテイ仕様だ。

勿論リアムもグレーのタキシードを着ていた。

それはかなり乱れていたけれど…

まさかパーテイの真っ最中とは思わず由里は仕事仕様の服で来ている。

そういえば今日は友人たちを呼んでクリスマスパーテイをするとか言っていたのを思い出した。

10時には由里も合流できると言っていたのをすっかり忘れてしまっていた。

9時には終わるはずのパーテイだったが出席者同士が口喧嘩を始めてしまい、女同士の口喧嘩は男性も遠巻きに見ているだけで誰も止めようがなかった。

ある程度白熱して二人が息継ぎをしている時に、由里は二人に水の入ったグラスを渡して

「日本ではこれを水入りと言って一時休戦にするんですよ」

と言ってにっこり笑って見せた。

二人は虚を突かれたのだろう、黙ってグラスを受け取り水を飲みほした。

そして二人の友人たちが二人をそれぞれに連れて行ってくれたので、何とか喧嘩は収まった。

パーテイの主催者は由里の采配に感心して、もう少しで取っ組み合いの喧嘩になるところを収めてくれたと言って感謝してくれた。

そして男性陣にも囲まれて

”水入り”の説明をすることになった。

日本の相撲の言葉なので男性陣は興味深く聞いていた。

そのあと相撲について質問されて30分以上彼らに捕まってしまったのだ。

そんなこんなで9時にはお開きになるはずのパーテイが片づけまで終わるころには11時半を過ぎていた。

主催者には遅くなった分も請求するようにと言ってもらったので、ケイタリングの業者には追加分の料金を支払わせてもらえそうだ。

今日はクリスマスイブなのでミッシェルには休みを与えていたので、由里一人で片付けも最後まで仕切っていたのだ。 

1分でも早くリアムのもとに行くことだけしか頭にはなかった。

家に寄ってパーテイ用に用意していたドレスに着替えることも失念していた。

とにかく焦って急いで来てしまったのだ。
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