真夜中の償い

幸せな日々

由里の捻挫もすっかり癒えて、今は2月中旬ニューヨークは一番寒い時期を迎えていた。

そんな時相馬から一番下の息子が、ニューヨーク大学に留学することが決まったと連絡があった。

大学の新年度は9月からだが、息子の省吾は4月にはこちらに来て語学学校にしばらく通って9月からの新学期に備えるらしい。

由里に彼の世話を頼めないかということだった。

省吾は子供じゃないのだから由里に頼るのは嫌だと渋っていたが、二人には面識があり遠慮しているようだ。

由里は相馬にリアムとのことを話して、ペントハウスに一緒に住むことにしたので今由里が住んでいるアパートに省吾が住んだらと提案した。

彼は日本で大学を卒業した後すぐに弁護士資格を取っているが、国際弁護士を目指してニューヨーク大学のロースクールに入学するらしい。

とても優秀な青年だ。さすが相馬の息子だ。

由里の住んでいる所は治安もいいし地下鉄の駅にも近い。

ニューヨーク大学の学舎はマンハッタンのいろんなところにあるけれど、ここからなら自転車でも行ける範囲だと思う。

そういうと相馬は“それはありがたい“ぜひお願いしたいと言った。

そしてリアムとのことはすごく喜んで祝福してくれた。

相馬の後輩のSKの取締役にもお願いはしておいたが、リアムや由里が近くにいるのがありがたいと言っていた。

由里はアパートの引継ぎの手続きや諸々きちんとやっておくといった。

そして電化製品や食器などリアムの所には十分そろっているので、省吾が使えるようにベッドも冷蔵庫も嫌でないならそのまま置いておくと言った。

すぐに省吾からも電話がかかってきて、そっちに行ってすぐに快適に住めるのは大変ありがたいと喜んでくれた。

相馬への恩はこんなことぐらいでは返しきれないが、少しでも恩返しできたならうれしいと思う由里だった。

そしてパーテイやイベントの時に時々バイトしてくれると嬉しいと言ったら、是非と言ってくれたのでまた一人助っ人が増えて頼もしい限りだ。

特に男性の助っ人は会場の設営などの力仕事にとても助かる。

今まではミッシェルと二人で何とか脚立に乗ったりして頑張っていたのだ。

真理子もいるしイベントのたびに事務所が留守になることも少なくなってきて、由里は仕事にも充実感を持って働いていた。

由里がペントハウスに移る前にリアムは大改装すると言って、由里に内装を考えてコーデイネ―ターに由里の希望を伝えて改装を仕切るようにと言った。

由里はそこまでしなくてもいいと言ったのだが、言い出したら止まらないリアムには逆らっても仕方がない。

由里がペントハウスに行くのを嫌がっていたせいだ。

最初しり込みしていたがどうしても一緒に暮らしたいリアムは、言葉巧みに由里を説得して了承を取り付けた。

リアムが本気でやろうと思ったことに、ノーと言える人はなかなかいない。

由里も根負けした感じだ。

でも、実際に内装の打ち合わせが始まると由里は生き生きとして、このようにしたいと雑誌の写真などを見せながら関係者に指示を出していた。
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