真夜中の償い

すれ違っていく二人

毅然としていたいと思うのに、崩れ折れそうになる。

「アッ、ほら二人がやってきた今日は小さなパーテイがあってね、リアムがエスコートしてくれるってリリアが喜んでいたよ」

由里は恐る恐る顔を上げるとロビーを二人が腕を組んで楽しそうに話しながら歩いてくる。

そして彼女はちょうど由里の目の前に来ると

“リアム“と呼んで横を見たリアムの唇にキスをした。

「リリアふざけるな!こんな所で何やってるんだ。レデイの振舞いじゃないぞ」

と言って彼女をたしなめたが彼女は気にも留めていない。

フフッと笑って

「だってキスしたくなったんだもん」

と、堂々としていた。由里はミスター・ゴバートに

「お話は分かりました」

と告げると立ち上がった。その時

「由里」

とリアムが叫んだが、由里は止まらず走っていった。

ホテルの正面ドアを抜け止まっていたタクシーに乗った。

とにかくここから離れたかった。

頭の中にはリアムの腕に絡みつく若く美しい女性の姿が、何度も浮かんできた。

二人の姿は気品に満ちていて、キスシーンは映画の一場面のようだった。

もうニューヨークには居られない。

そんな強迫観念にとらわれてしまっていた。

ペントハウスに行きタクシーを待たせて、素早くスーツケース2個に手当たり次第に服や化粧品などを詰め込んで、その足で空港に向かった。

空港に着いたのはホテルを後にして1時間後の事だった。
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