真夜中の償い

真夜中の償い

そう思っていたある日、リアムに急に東京に行くぞと言われて大急ぎで準備をして、今カサブランカ東京のスイートに二人はいる。

ホテルはほとんどの準備が終わりもう少しで開業日を迎える、そんなあわただしい時期だった。

従業員の予行演習もかねての宿泊で、リアムはきびしくチェックするように由里にも伝えている。

着くとすぐにリアムが由里ここに座ってと言ってソファに由里を誘う。

そしてすごくまじめな顔で話があると言った。

「実は由里の母親が見つかった。ずっと探していたんだ。だいぶ前にわかってはいたんだけれど由里に伝えるべきかどうかずっと迷ってた。でも、お母さん末期がんでもう1か月持つかどうからしいんだ。だから悩んだけど由里に言わずにはいられなかった。由里はどうしたい?会ってもいいし会わなくてもいい。由里が決めるんだ」

「もちろん、会うわ。会わなかったことを後で後悔したくない。私のバックグラウンドを知っている人だもの。母親がいるならどうして養護施設に行くことになったのかも知りたいわ。ちょっと怖いけど話を聞かなければいけない気がする」

由里は少しの間逡巡したがきっぱりとリアムに告げた。

由里は後悔するなら、やらなかったことを後悔するよりやってしまったことを後悔する方が、ずっといいといつも思っている。

「さすが由里だ。何があっても何を言われても僕は由里の見方だ。ずっと一緒にいる。それを忘れないで」

その後、二人は車で都内の緩和ケア専門の病院に由里の母親を訪ねて行った。

とても綺麗ところで全室個室らしい。とても高そうな病院だ。

母親は裕福な暮らしをしていたのかと、複雑な心境になった由里だった。

リアムは慣れた様子で病室まで由里をいざなった。

「ねえ、リアムここは初めてじゃないの?」

「うん、実は1ケ月くらい前に由里のお母さんを見つけたんだけどその時は普通の病院の大部屋に入っていたんだ。でも末期がんで治る見込みがないなら緩和ケアに切り替えたらと提案して、強引にこの病院に転院させたんだ。勝手にゴメン。でもすごくいい人で由里を大切に思ってくれていたんだ。だから、僕の判断でここに入ってもらったんだよ」

そうかリアムが手配したなら高級な所だとうなずける。
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