不完全な私を愛してくれたのは、年上の彼でした

第4話



金曜日。私はオフィスで、チームのみんなに声をかけた。

「みんな、ちょっと相談に乗ってくれる?」

会議室に集まった同僚たちに、私はプロジェクトの概要を説明した。

武男さんの店のこと。60年の歴史。そして、「心が伝わるサイト」を作りたいという想い。

「素敵なプロジェクトですね」

デザイナーの佐藤さんが身を乗り出した。

「私、こういう人間味のあるデザイン、大好きなんです」

「もちろん手伝います!」

田辺さんも二つ返事で答えてくれた。

「私も!」

「僕も!」

みんなが次々と、頷いてくれる。

「ありがとう。ただ、一つだけお願いがあります」

私は真剣に言った。

「このサイトは、『正しさ』じゃなくて、『想いが伝わること』を目指したいんです」

「了解です」

「希さんの想い、僕たちも共有します」

「ありがとう、みんな」

会議室を出る時、沙紀が私の肩を叩いた。

「希ちゃん、変わったね」

「え?」

「前は、絶対に人に頼らなかったのに。今は、ちゃんとみんなを信頼できるようになった」

沙紀が穏やかに笑う。

「それって、すごい成長だと思うよ」

その言葉に、胸が熱くなった。

「ありがとう、沙紀」

「お礼なんていいよ。これからも、一緒に頑張ろうね」



その夜。私は篠塚さんと、「珈琲と本」で待ち合わせた。

「お待たせしました」

篠塚さんが、大きなバッグを持ってやってきた。

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