不完全な私を愛してくれたのは、年上の彼でした

エピローグ



3ヶ月後──春。

「希さん、おめでとうございます!」

田辺さんが、花束を持ってきてくれた。

「プロジェクトリーダー昇進、すごいですね」

「ありがとう。これも、みんなのおかげだよ」

パティスリー・ルミエールのWebサイトは、大成功だった。

公開から1ヶ月で、オンライン注文は前年比200%。店舗への来客も150%増加。

そして何より嬉しかったのは、「温かいサイトですね」というコメントをたくさんもらったこと。

「希ちゃん、これ見た?」

沙紀が、タブレットを見せてくれた。

そこには、パティスリー・ルミエールのレビューが表示されていた。

『このサイトを見て、初めてお店に行きました。
サイトから伝わってくる温もりが、実際のお店にもありました。
武男さんの笑顔と、美味しいタルト。
整っていないけれど、だからこそ愛おしいお店です。』

読みながら、喉が詰まった。

「お客さんに伝わったんだね。希ちゃんの想いが」

沙紀が微笑む。

「ううん。みんなの想いが、だよ」

私は笑った。

「私一人じゃ、できなかったから」



その日の夕方。私は早めにオフィスを出た。

今日は、悠大さんとデートの約束がある。

待ち合わせ場所は、あの「珈琲と本」。

すべてが始まった場所。

カフェに着くと、悠大さんがすでに待っていた。

彼は立ち上がって、私を迎えてくれる。

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