不完全な私を愛してくれたのは、年上の彼でした
エピローグ
3ヶ月後──春。
「希さん、おめでとうございます!」
田辺さんが、花束を持ってきてくれた。
「プロジェクトリーダー昇進、すごいですね」
「ありがとう。これも、みんなのおかげだよ」
パティスリー・ルミエールのWebサイトは、大成功だった。
公開から1ヶ月で、オンライン注文は前年比200%。店舗への来客も150%増加。
そして何より嬉しかったのは、「温かいサイトですね」というコメントをたくさんもらったこと。
「希ちゃん、これ見た?」
沙紀が、タブレットを見せてくれた。
そこには、パティスリー・ルミエールのレビューが表示されていた。
『このサイトを見て、初めてお店に行きました。
サイトから伝わってくる温もりが、実際のお店にもありました。
武男さんの笑顔と、美味しいタルト。
整っていないけれど、だからこそ愛おしいお店です。』
読みながら、喉が詰まった。
「お客さんに伝わったんだね。希ちゃんの想いが」
沙紀が微笑む。
「ううん。みんなの想いが、だよ」
私は笑った。
「私一人じゃ、できなかったから」
◇
その日の夕方。私は早めにオフィスを出た。
今日は、悠大さんとデートの約束がある。
待ち合わせ場所は、あの「珈琲と本」。
すべてが始まった場所。
カフェに着くと、悠大さんがすでに待っていた。
彼は立ち上がって、私を迎えてくれる。